記事カテゴリ:

24 地球温暖化 ~大きさ増す氷河湖 現状伝える活動も~

24-tamura-1026p.jpg
 私たち山を愛する者にとって大事なのは山の環境です。当然、自然保護への関心が高まり、活動に関わるようにもなります。私も「長野県自然保護連盟」には発足から参加しました。1960~70年代に盛り上がったビーナスライン建設反対運動に関わった団体などを中心に73(昭和48)年に結成され、県山岳協会も参画団体の一つでした。

 長野五輪の滑降会場を、当初予定されていた志賀高原の岩菅山から八方尾根に移すことになったのも、県自然保護連盟などの反対運動があったからです。一時は山のごみが問題になりましたが、最近は登山者のマナーが向上しているように思います。今、私たちが危機感を持っているのは地球温暖化の影響です。

  深刻な事態を確認
 実は、ヒマラヤ登山は将来難しくなるのではないかとの危惧があります。ヒマラヤに登ることができるのは、氷河の上を歩けるからで、これが溶解したら巨大な岩場が出現することになります。さらにネパールの友人たちからは「氷河湖が大きくなっている」との連絡が入っています。

 もはや登山ができる、できないの問題ではなく、もし氷河湖が増水して決壊でもしたら、とんでもないことになります。ネパールだけでなくインドやバングラデシュにも甚大な被害が及ぶでしょう。こんな大きな問題に対して専門家でもない私が何かできるわけではありませんが、せめて現状を見て伝えることくらいはしたいと思い、2009年に「ネパールヒマラヤ イムジャ氷河環境トレッキング」を、長野県山岳協会の事業として企画しました。

 幸い大きな反響があり、信濃毎日新聞の同行記者を含む21人が参加。私が隊長で、ネパール登山協会の方々と一緒に視察しました。そして、本当に深刻な事態であることを目の当たりにしました。

 今は氷河湖と呼んでいますが、昔は直径50メートルほどの水たまりだったそうです。それが30年後の現在、幅2キロの湖になっているのです。湖がせき止められているのは、たまたま巨大な岩があるからに過ぎません。恐ろしいことにその岩の下は永久凍土で、それが少しずつ解け出しているというのです。

 先進国のようにダムなどの技術でコントロールする力は、ネパールにはありません。カトマンズには国際的な自然科学の調査研究所もあり、各国の調査団がよく訪れています。私たちも調査団と思われ、「調査はしても自分たちに説明がない」といった声を現地の住民から聞きました。非力を感じるばかりですが、せめて一人でも多くの人に知っていただきたくて、現状を伝える活動を心掛けています。

  ネパール植林も協力
 もう一つ、仲間を募って協力しているのは、ネパールの植林事業です。安曇野市在住の小児科医で登山家でもある安倍泰夫さんは、アンナプルナ山群で雪崩に巻き込まれたところを助けられたのがきっかけでカトマンズの病院に勤務。子どもたちが下痢で次々と亡くなるのは、森林が破壊されて汚れた水を飲むからだと知って始めたのが植林事業です。20年を超えて50万本もの森を復活させるなど着実な成果が出ています。

 一緒に汗を流すのが大事と考える私の方針で、仲間と現地に行き植林を手伝いました。費用もかかるため頻繁に伺うことはできませんが、自然をお借りして楽しませていただいてきた分のお返しを、ささやかでもしていきたいと思っています。
(聞き書き・北原広子)
(2013年10月26日号掲載)

=写真=地球温暖化の影響で年々大きくなっていくネパールのイムジャ氷河湖
 
田村宣紀(のぶよし)さん