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033 スペイン フリヒリアーナ ~胸がときめく白一色の村~

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 わくわくするとはこのことだ。南スペインの中心地マラガからバスで1時間余。高台に白い家の群落が見えた。バスから降りてネルハからフリヒリアーナへはタクシーを奮発した。およそ10キロ。運転手もこの村の出身だそうで、「スペインで最も美しい村」と呼ばれていることを誇らしげにとうとうと語る。

 白一色の村に胸がときめいた。人口わずか数百人。観光地化された近くのミハスを避けてここを選んだのは、正解だった。人混みが苦手だからだ。わずかな観光客のみで村民が穏やかに生活している様子。この村をはじめアンルシア地方に白壁の家が山あいに点在しているのは、キリスト教による失地回復運動(レコンキスタ)の軍門に下ったイスラム教徒が隠れ住んだ場所だからだ。

 平家や豊臣の落人が隠れ住んだ名残に似ている。真白い壁は気温と日差しの強い地方で太陽光を反射させるための生活の知恵だ。

 中心の小路を上りながら、純白の壁や玄関の色に異次元の世界に迷いこんだような錯覚も覚える。連続する階段を息切って上り、一息ついて見える土産物屋にふらりと入って見る。絵葉書をはじめ刺しゅうや絵皿など素朴なものばかり。売り場の人たちの純朴な対応にうれしくなった。

 外出しようとしていた村の娘さんたちと会話が持てた。「ここは暖かくなると、窓辺にもっと花がいっぱいになってきれいなの。白壁も定期的に塗らなければならないのは大変だけれども、みんなこの美しさを誇りにしている」と説明。私たちとの記念写真にも快く応じてくれた。

 この村には猫が多い。ゆったりのんびり闊歩(かっぽ)する姿は、村人を映す鏡のようだ。頂上からは白い村の向こうに地中海が光る。

 タクシーの運転手に勧められたレストランに立ち寄った。昼食時なので皆でパエリアを注文。「スペインとくればパエリアでしょ」。誰かが叫んだ。土地、土地で料理の方法も味も違うものだ。

 ムール貝やイカなどは一目瞭然だが、米はリゾット風。外見は我々の予期していたものとは違っていた。店によってレシピが違うのだという。オリーブの香りと海の幸の味が染みて美味ではあった。

 テーブル席のわれわれと違い、カウンター席には地元の顔なじみが世間話に興じていたので、帰りがけに「写真を撮らせて」というと、皆気さくに笑顔を見せてくれた。
(2013年11月16日号掲載)

=写真=フリヒリアーナの小路
 
ヨーロッパ美の旅