子宮がんには2種類あることをご存じでしょうか。子宮はナスのような形をしており、へたの辺りを子宮頸部と呼び、丸く膨らんだ部分を子宮体部と呼びます。がんは、それぞれ発生場所の名前を付けて「子宮頸がん」「子宮体がん」と呼んでいます。
このうち子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルスが原因であることが明らかとなり、ワクチンも開発されています。
もう一つの子宮がんである子宮体がんは、40~60歳の女性に多く、年々増加傾向にあります。また、月経がある40代の患者さんが以前より増えている印象があります。
子宮体がんは、子宮体部の内側を覆っている子宮内膜から発生するので、「子宮内膜がん」ともいわれます。このがんの発生には、女性ホルモンの異常が深く関わっています。
2つの女性ホルモン
通常いわれる女性ホルモンとは、「エストロゲン」と「プロゲステロン」です。月経が順調な人の場合、卵巣から半月の間エストロゲンが分泌され、残りの半月はプロゲステロンが分泌されます。エストロゲンは子宮の内膜を厚くさせる働きがあり、プロゲステロンは赤ちゃんがくっつきやすい状態に内膜を変化させる働きがあります。こうしたホルモンのリズミカルな分泌により、子宮内膜は正常な状態に維持されているわけです。
不正出血放置しないで
ところが、月経不順の人はこうしたリズムが崩れているため、子宮内膜を厚くするエストロゲンばかりが長い期間分泌され、内膜が厚くなり、がん化するということが起きます。
子宮体がんの症状は不正出血ですが、月経が不順な人は不正出血があっても「いつものこと」とあまり気にせず、受診した時にはすでに進行した子宮体がんになっているということがあります。不正性器出血があったら、産婦人科を受診することが大切です。
子宮体がんになりやすいのは、出産経験のない人です。最近は生涯で一度も出産をしない人も少なくありません。出産していれば授乳中は月経が止まるので、妊娠中も合わせると2年ほど月経は止まることになります。この間は子宮内膜にエストロゲンの刺激がかからないので、それだけ発がんの危険は低くなります。

月経が不順な人や出産経験のない人で、おかしな出血があった場合は、子宮体がんの可能性があります。また、出血がいつまでも続くときは、子宮の中に内視鏡を入れて調べる精密検査を受けることをお勧めします。
(2013年11月30日号掲載)
=写真=森篤(婦人科部長=専門は悪性腫瘍)