「喫煙による健康被害」は世界的なテーマであり、日本でも禁煙対策が進められています。
様々な病気の原因に
たばこには多くの有害物質が含まれ、肺がんをはじめとする全身の様々な部位のがん、脳卒中や虚血性心疾患などの循環器疾患、肺気腫などの呼吸器疾患、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化器疾患、糖尿病など、様々な病気のリスクが増大することが分かっています。最近では、体内被ばくを起こす放射性物質を含む可能性も指摘されています。
他人からの受動喫煙でも喫煙者と同様の被害が出ることが分かっているため、非喫煙者も安心できません。
受動喫煙は分煙では防ぎきれません。屋外でたばこを吸い、吸い終わって室内に入ってくる喫煙者も周囲に受動喫煙の害を及ぼします。たばこの有害物質が髪の毛や服、肺などに吸着し、室内に入ってからも放出され続けるため、受動喫煙を防ぐには完全に禁煙するしかありません。
喫煙習慣は脳の病気
喫煙がやめられないのは単なる習慣や嗜好の問題ではなく、「ニコチン依存症」という脳の病気だということが分かっています。最近では禁煙外来に取り組む医療機関が増え、禁煙をサポートする体制が整ってきました。
禁煙治療には健康保険も使えます。禁煙治療に保険を適用する患者の条件は、(1)ただちに禁煙する決意を固めていること(2)1日の喫煙本数×喫煙年数が200を超えていること(3)ニコチン依存症と診断されていること(4)治療に関して文書によって同意していること(5)プログラムに沿って5回の受診が可能なこと-です。2014年度からは、20代の禁煙治療希望者に対しては、喫煙本数×喫煙年数が200以下でも保険による治療ができるようになる予定です。
禁煙中のイライラ(離脱症状)を抑え、楽に禁煙できる画期的な内服薬も開発され、禁煙成功率が高いことから、この内服薬が禁煙治療の主流となってきています。

たばこを吸っている人は直ちに、そして気軽に禁煙に挑戦してください。過去に禁煙に失敗した経験がある人は、禁煙は一度ではなかなか成功しないものなので、諦めずに何度でも挑戦していただきたいと思います。
(2013年12月14日号掲載)
=写真=緑川 薫(看護部第2外来看護師・禁煙支援リーダー)