記事カテゴリ:

10 委員の来訪 ~歓迎し盛り上げる 好評だった自宅招待~

10-tsukada-0118.jpg
 1990(平成2)年9月にはIOC(国際オリンピック委員会)の東京総会が開かれることになり、各国のIOC委員らの長野視察のための来訪が相次ぐようになりました。

 国際スキー連盟会長のマーク・ホドラーさん(スイス)、東京五輪の柔道金メダリストのアントン・ヘーシンクさん(オランダ)、スポーツ整形医のケビン・オーフラナガンさん(アイルランド)、IOC副会長の何振梁さん(中国)らです。

 私たちはいかに長野を評価してもらうか努力しました。市民ボランティアの皆さんによる長野駅前での出迎えや、表敬訪問の際の県庁・市役所での歓迎などで盛り上がり、「ヒロインになったよう」と喜んでくれた夫人もいました。

 日本の生活に触れる
 日程に余裕のある何人かは私の自宅へお招きし、築160年余の木造古民家を楽しんでいただきました。私は仕事があるので、妻と母に頼んでお茶と漬物、おでんなどを用意し、近所の踊りの師匠に黒田節を踊ってもらったりして日本の生活の一端に触れていただき好評でした。

 ポルトガルのリナ・ベロ委員は建築家で、日本の古民家に大変興味を示され、家の内外の写真を何枚も撮られたそうです。アフリカ・マリ共和国のラミネ・ケイタ委員は、おでんのこんにゃくが珍しく、どのように作るのか熱心に聞かれたようです。

 モンゴルのマグバン委員は大学教授で、大変日本びいきの方でした。お孫さんは信州大学に留学し、卒業後も長野市に住んでいるので時々お会いしています。ハンガリーのパル・シュミットさんは当時IOC副会長でしたが、長野五輪後に大統領に就任され、お祝いのメッセージを送りました。

 西サモアのウォールワーク委員は、長野で歯の治療を受けたいというので歯科医を紹介したところ、日本の医療水準の高さにいたく感心していました。

 こうした方々のお世話は役所だけでは対応できないので、若手経済人に「長野フレンズクラブ」を結成してもらい、メンバーにオリンピックファミリーの面倒をみていただくことにしました。

 このころは長野を訪れる五輪関係者のお世話をするだけでなく、こちらからも海外に出て積極的に委員らへの働きかけを行うようになりました。私たちだけでは手が回らないので、招致委員会特別顧問の加賀美秀夫さんと、実行副委員長の吉田総一郎さんに特に活動してもらいました。

 2人が大きな力に
 加賀美さんは国連大使などを歴任された方で、精力的に各国のIOC委員らと懇談していただき、情勢分析や外務省によるサポートなどに貴重な助言をいただきました。

 吉田さんは、行政を抱えて忙しい私たちに代わって、英語に堪能でフリーに動ける人を「ミスター長野」として置くよう猪谷千春さんから要請があり、地元での人選の結果お願いすることにしました。当初は難色を示しておられましたが、夫人が米国人でもあり、引き受けられてからは各国のオリンピックファミリーに意欲的な訪問活動を展開していただきました。

 また、富士通や三協精機など県内に工場や本社があって海外進出している企業にも、その国の関係者に働きかけてもらうなど、あらゆるルートでPR活動を展開しました。
(2014年1月18日号掲載)

=写真=自宅を訪れたIOC委員に師匠が黒田節を披露
 
塚田佐さん