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036 スペイン サルダーナ ~結束を表す踊りの輪~

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 独立の機運が今でも高いカタルーニャ地方の文化の一つに、サルダーナがある。バルセロナのゴシック地区の大聖堂前で毎週日曜日の正午に、集まってきた人たちが踊るのがサルダーナだ=写真。

 コブラと呼ばれる楽隊の生演奏に合わせて、老若男女が手をつないで輪になって踊る。お互い見知らぬ者同士でも手をつなぎ輪を作る。手のつなぎ方も握手の握りではなく親指を除く4本の指を手のひらに包むように握る。

 音楽はグラジャと呼ぶオーボエに似たものやトランペット、ピッコロの管楽器による。例外の弦楽器はチェロ。チロル地方の音域に似ていなくもないし、踊りはフォークダンスに似ている。

 加わるのも外れるのも自由。中央の空きスペースに荷物や上着などの身の回り品を置いて、大小幾つものサークルができる。

 起源は古代ギリシャにさかのぼる。クレタ島の陶器にもサルダーナの原形を思わせる図柄が見られるし、ホメロスの名作「オデッセイ」にも登場する。長い風雪に耐えて生き残った。それもフランコ独裁政権時代には、カタルーニャの地方色が強いとして、カタルーニャ語とともに禁止された。手をつなぎ輪を作るのは、カタルーニャ地方の結束を意味している。彼らは屈しなかった。

 文化は力で抑えられるものではない。地元の人の言葉を借りれば「人々の自由と団結を象徴する踊り」。周囲の侵略に耐え、自ら自由を勝ち取った民族的表現で、横の壁にはピカソによる、サルダーナを踊る人々が描かれている。

 私の好みは"レヴァンティーナ"と"ラ・サンタ・エスピーナ"。カタルーニャの民族的な誇りを強く感じられる曲だ。

 かの天才物理学者のアインシュタインはサルダーナの踊りを見て「これを一目見ればカタルーニャ人の人柄がわかる」と言った。アンダルシア地方の熱情の文化・フラメンコとは対照的に、勤勉かつ冷静な文化のカタルーニャ。結び合った手を高く挙げる様子は、大聖堂の尖塔(せんとう)に向かって突き出されているような不屈の精神を強く意識させる。

 バルセロナ五輪でカタルーニャ語が公用語として使われたのは、彼らの強い民族性を象徴していたが、日本人にはなかなか理解しにくいところだろう。
(2014年1月1日号掲載)
 
ヨーロッパ美の旅