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039 イスタンブール ボスポラス海峡 ~西洋と東洋 文明の十字路~

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 作家の五木寛之氏が故郷の玄界灘に照らして、ボスポラス海峡に思いをはせる番組を見たことが、私の生まれ育った横浜にも相まって、いつしか脳裏から離れなくなった。

 ボスポラス海峡―。何と心地よい名の響きだろう。ボスとはトラキア語で「牛」、ポラスとはギリシャ語で「通路」。この海峡を挟んで、東がアジア、西がヨーロッパという世界でも稀(まれ)な地形だ。東西文明の十字路・イスタンブールにふさわしい語源といえる。

 この正月、所用もあり11日間、トルコのイスタンブールに滞在した。到着して真っ先に向かったのがボスポラス海峡だった。

 1時間半のマイナー観光の小型クルーズ船に乗り込んだ。南北新旧市街をつなぐガラタ橋から、やや西に離れた金角湾にある埠頭から出港した。

 金角湾からガラタ橋をくぐると、いよいよボスポラス海峡だ。上流の先は、はるか黒海に繋がる。北の新市街地の玄関口・カラキョイはにぎやかな街だ。ここからはずっと坂道が続き、ヨーロッパに向かって頂上のタクシム広場までは小高い丘だ。

 トルコの東西分裂の危機を救い、「建国の父」と崇(あが)められるアタチュルク初代大統領が執務を執り、息を引き取ったという壮大なドルマバフチェ宮殿が海岸沿いに広がる。

 新市街とアジア地区を陸路で初めて結んだ第1ボスポラス大橋が姿を現す。共和国建国50周年の40年前に完成した全長1.5キロのつり橋。この辺りからの景色は、旧市街にある大モスクの林立と宮殿や迎賓館、高級ホテルなど、息もつかせぬ光景だ。

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 観光クルーズ船や黒海への定期船などでかなりの混雑ぶり。乗客らが投げるパンのくずを狙ってカモメが乱舞する。

 第2ボスポラス大橋で船はUターン。この橋は、日本の政府開発援助(ODA)による日本企業の建設技術によるものだ。高さ約70メートルと、見上げるほどのつり橋だ。

 帰路は東側アジア地区沿いを通る。この海峡をじっと見つめながら、五木寛之氏の思いと、西洋と東洋にまたがる長い闘争の歴史を思い浮かべていた。

 同じ船に居合わせた家族に、まだ20代と思える、イスラムの女性がいた。目だけを出すアバヤという独特のコスチューム。ご主人の了解を得て写真を撮らせてもらった。エジプトからの人だとか。食べる姿を見ると、あごの下から口に運ぶ不思議な光景だった。
(2014年2月22日号掲載)

=写真=観光船や定期船が行き交うボスポラス海峡
 
ヨーロッパ美の旅