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17 競技施設整備 ~エムウェーブ建設 知事と遣り合う~

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 長野市内の五輪施設は当初から、若里のビッグハット(男子アイスホッケー会場)はコンベンションホールに、東和田のアクアウイング(女子アイスホッケー会場)は市民プールに、真島のホワイトリング(フィギュアスケート会場)は市民総合体育館に活用することにしていました。

 開閉会式は、市総合計画に沿って南長野運動公園を造り、その野球場を使用しました。屋内スピードスケート施設のエムウェーブと、リュージュ・ボブスレー会場のスパイラルは競技専用施設として活用する方針でした。

県が造る予定が市に
 招致段階での県・市の施設検討委員会では、競技施設の国の補助金が2分の1と決まっていたため、残りのうち半分を県が補助金として負担。合わせて4分の3が国・県の補助金で賄えるので、市の負担は4分の1で済むことになったわけです。開催都市としては種々予算が必要なので、私は「市民益第一」で行こうと思っていました。

 そのころ週刊誌には「長野市は五輪で財政が破綻する」などと書かれていました。信越線で上京し上野で電車に乗ると、乗客が一斉にこちらを見るので、何事かなと車内のつり広告を見上げると、私の顔写真が大きく掲載されていることもありました。

 そうかと思うと、陳情で建設省へ行くと課長さんが「オリンピックの市長さんが見えたから、全部要望に応えてあげなさい」と言ってくれて助かったこともありました。

 競技施設のうち、エムウェーブについては県が造る予定でしたが、途中から雲行きが怪しくなり、知事室で吉村知事と会談することになりました。最初は2人で話すつもりでしたが、激論になると思ったので県職出身の山岸勲助役に立ち会ってもらいました。エムウェーブについて私から施設検討委員会の方針どおり県で造るようお願いしたところ、知事は「長野市で造ってほしい」と言うのです。

 そのため、「県で造るべきだ」「県は造らない」と激しいやりとりになりました。吉村知事は激してくると特に早口になるので、私は「とにかく約束は守ってほしい」と強く念押しし、その日はそのまま帰ってしまいました。

県「全面協力」で決着
 翌朝、市役所に出勤すると招致委員会の市村勲事務総長が待っていて、「きのうは知事と激しくやり合ったそうじゃないですか。週刊誌に書かれてもまずいので、早く仲直りしてほしい」とのことです。

 知事も補助金はできるだけ多く出すし、五輪後の運営にも協力するので、何とか市長に了解してもらうように、とのことでした。県議会で「補助金はいいが、直営施設はだめ」と言われ、知事選を控えて困っている、とのことです。

 吉村知事とは県議時代からお付き合いがあり、長野高校の大先輩でもあって良好な関係でしたが、この時は互いに「市民益」と「県民益」のぶつかり合いでした。

 その翌日、市村さんと知事室へ行き、今度は冷静に話し合いました。私も選挙を控えた苦労は分かるので、五輪施設の財源確保には県も全面的に協力するということで、この問題を決着させました。
(2014年3月8日号掲載)

=写真=建設主体をめぐり、吉村知事と激論を交わしたエムウェーブ
 
塚田佐さん