メニエール病は、内耳の内リンパ水腫という特殊な病態から起きる、めまいや難聴の病気です。
内耳の機能には、平衡感覚と聴覚があります。内耳には内リンパ液が満たされている部分があり、メニエール病は、何らかの原因で内リンパ液が過剰となり、その部分の圧が高まることによって、平衡感覚と聴覚の異常が繰り返されます。
初めのうちは元に戻りますが、繰り返しによりその部分が伸びてしまい、やがて荒廃して悪化し、機能障害が残ってしまいます。
中高年女性に多く
調査から、長野市内のメニエール病患者は150人で、年間約20人が発症していると推定されます。その6割が中年女性で、以前は40代が最多でしたが、最近は50~60代に多くなっています。
内リンパ液の過剰や内圧上昇の原因ははっきり分かっていませんが、神経質できちょうめんな人、精神的・肉体的ストレスが大きい人や睡眠不足の人、社会的に責任のある職業の人に多い傾向にあり、ストレスが関与していることは明らかです。
めまいの特徴は、①特別なきっかけなしに発生し、吐き気・嘔吐(おうと)を伴うことが多い。持続時間は10分から数時間程度②多くはぐるぐる目が回る回転性のめまいで、難聴以外の意識障害などの中枢神経症状を伴うことはない③めまい発作の回数は、週数回の高頻度から年数回程度まで様々で、家庭・職場環境の変化、ストレスなどが発作回数に影響する―。
聴覚症状の特徴は、①主にめまい発作前または発作と同時に起こって強くなり、めまいの軽減とともに軽快する②症状は難聴、耳鳴り、耳閉感で、強い音を過敏に感じやすくなる―などです。
治療は、内リンパ水腫を軽減させる利尿剤のほか、ストレスに対して精神安定剤、めまいに対して炭酸水素ナトリウム注射、難聴に対してステロイドなどの薬を使用します。
ストレスを避けて
この病気は、3年以上経過しても症状がひどく仕事ができない状態が続く場合もあり、予防が大切です。ストレスを避けることが重要で、おしゃべりをしたり歌を歌ったり、気晴らしできるような趣味を持つことなどを心掛けましょう。
たばこやアルコール、塩分、チョコレート、カフェインなどの刺激物を控え、寝不足を避けて規則正しい生活をしましょう。
また、汗をかくような有酸素運動(脈拍120以上、1時間程度)は内耳の循環改善を促し、自然治癒力を高めると考えられています。
(2014年3月15日号掲載)
=写真=野村康( 耳鼻いんこう科部長=専門は耳鼻いんこう科、頭頸部腫瘍)