
長野五輪では、子どもたちの国際交流を進めた「一校一国運動」と並んで、もう一つの重要な取り組みとして、発展途上国の子どもたちを支援した「長野オリンピック国際協力募金(長野オリンピック・ハーモニー)」の活動があります。
五輪前年の1997(平成9)年5月に実行委員会を設立して進めた、この取り組みは長野市独自のものです。21世紀への架け橋となる平和の祭典開催都市の栄誉を記念し、世界の子どもたちのために貢献したいという狙いでした。
具体的には、個人・企業から寄付金を募り、五輪選手の写真入りテレホンカードや、帽子、Tシャツなど、ハーモニーグッズの販売による収益金を支援に充てることにしました。
大勢の市民が賛同
計画を発表したところ、早速、大勢の市民から賛同をいただきました。中には、善光寺平の目印にもなっていた屋敷内のケヤキの老木を伐採するので、その記念に―と多額の寄付金を持ってきてくださった方もいて、大変感謝しました。
当初、テレホンカードやグッズの売れ行きはぼつぼつでしたが、五輪が開幕すると、清水宏保選手や里谷多英選手、ジャンプ団体の金メダルのおかげで急に売れ出し、在庫がなくなるほどとなって助かりました。
このため、1億円の資金確保目標を上回る2億7300万円にもなり、20カ国に2億4200万円の支援をすることができました。世界の子どもたちのために貢献できたことを、ご協力いただいた皆さまに感謝申し上げます。
支援実績としては、アジアではブータン、バングラデシュ、モンゴル、キルギス、北朝鮮、ラオスなど8カ国に、それぞれ10万ドル(1200万円)相当ずつの支援を行いました。
ベトナムには、小学校15教室を補修し机・椅子を提供。さらに小学校30校にスポーツ用品、1万8千人の児童にワークブックとノート、6小学校の8千人に参考書、9210人に学校かばんを贈ることができました。中国では、長野市と友好都市の石家荘市に小学校3校を建設することができました。
アフリカでは、セネガル、アンゴラなど4カ国の子どもたちに必要な支援をして感謝されました。そのほか、中米のジャマイカ、エルサルバドル、ホンジュラス、オセアニアのパプアニューギニア、欧州ではボスニア・ヘルツェゴビナ、アルメニア、ユーゴスラビア(コソボ自治州)、グルジアに、日本ユニセフ協会と相談して、それぞれ必要な物を提供しました。
サラエボへ出向く
ボスニア・ヘルツェゴビナへは私が出向き、内戦で破壊された五輪開催都市サラエボの市長とサラエボ県の教育副大臣に支援目録を贈りました。戦乱で壊れた校舎2校の修復費用と5千人分の学用品やスポーツ用具、ピアノなどを提供し、これを契機に三本柳小学校とナフィア・サライリッチ小学校が交流を始めました。
サラエボ市内では、五輪施設もだいぶ破壊されており、IOC(国際オリンピック委員会)の援助で修復するとのことでした。まだ至る所に地雷があるので、決められた場所以外は行かないように―との注意があり、戦乱の跡が生々しかったですね。サラエボは百年前に第1次世界大戦が勃発するきっかけになった都市でもあり、平和の尊さを実感しました。
(2014年4月19日号掲載)
=写真=サラエボの小学校で児童たちと交流