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24 物事を達成する満足感 ~尊敬と慈しみ育てる作り出す喜び~

 子どもが物を乱暴に扱って大事にしない、すぐに壊す、という行為に頭を抱えておられる方はいないでしょうか。

 バートランド・ラッセル(20世紀イギリスの哲学者)は、「教育論」の中で、子どもが成長する過程で身につける「物事を達成する満足感」には、「壊すことによる達成感」と「作り上げることによる達成感」があることを述べています。

壊すという行為
 小さな子どもが砂場で別の子どもが作った砂のお城を見たとき、突進していって、それを壊すことがあります。お城を作った子どもは憤慨し、親は驚き、叱るのですが、これは、子どもの中の「壊すことによる達成感」を求める心が起こす自然な行為です。

 壊すことは、作り出すことより簡単なので、小さな子どもは、その手軽な満足感を求めて「積み木の塔を壊す」「虫を殺す」「食べ物をぐちゃぐちゃにする」など、次々と破壊行為を繰り広げます。それに対して親ができることは叱責(と軽い罰)くらいですが、あまり効き目がないことは経験される方が多いと思います。

 あるカウンセラーは、破壊行為がひどい子どもを持て余した母親から相談を受け、その子に対して、粘土でカップを作ってくるように命じました。子どもは、苦労してカップを作り上げ、持ってきました。カウンセラーは受け取ると、それを床の上にたたきつけるふりをして、「これを壊すね」と子どもに告げました。  その子は驚き、壊さないでほしいと懇願しました。カウンセラーは答えました。「これを壊したって平気だよ。もっといいカップを買ってあげるから」。その後、その子の破壊行為は止まりました。なぜでしょう。

 それは、「作り出す達成感」は「壊す達成感」よりも、ずっと精神の満足度が高いからです。一度、物を作り出す達成感を味わうと、子どもは、壊すことよりも作り出すことに夢中になっていきます。そして、その達成感は、自分が作ったもの、育てた命に対するいとおしさだけでなく、ほかの人が作ったものや命に対する尊敬と慈しみの心を育てます。

 様々な破壊行為に頭を抱えることがあったら、子ども自身に「砂の城を作らせる」「種をまき花を育てさせる」「料理を作らせる」など、作る、生み出す行為をさせてみてください。それらの経験は「作り出すことの喜び」の方が「壊す達成感」よりもずっと心が満たされることを知っている人生になるか否かの重要な鍵となるはずです。
(2014年4月26日号掲載)
 
続・たてなおしの教育