061 ドクターヘリ ~機内で医師らが処置 助かった例も度々~

 皆さんもニュースなどでご存じだと思いますが、長野県には2機のドクターヘリがあります。それぞれ佐久総合病院(佐久市)と信州大学医学部附属病院(松本市)が主体となって運営しています。では、ドクターヘリとはどんなものなのでしょうか。

 救急車と連携
 ドクターヘリは、県警ヘリや防災ヘリとは異なり、山などで遭難した人を直接つり上げて救助することはできません。まず救急隊が患者さんを救助し、ヘリが着陸できる所まで救急車で搬送してからヘリに乗せます。

 ヘリを呼ぶかどうかは、救急隊や救急指令室が、緊急度や病院までの距離などを勘案して判断します。患者さんや家族が直接ヘリを呼ぶことはできません。

 ヘリにはパイロットのほかに医師、看護師が乗っていて、病院に着く前から治療を開始します。機内には救急医薬品や点滴、簡易超音波診断装置、人工呼吸器、吸引器などが搭載されていて、必要な緊急処置が行えるようになっています。

 救急司令室から依頼を受けて佐久や松本から飛び立ったドクターヘリは、現場近くで救急車と合流し、初期治療を行い、現場から比較的近い受け入れ可能病院を探して飛び立ちます。全ての患者さんが佐久や松本に連れて行かれるわけではありません。当院の敷地内にはヘリポートがあり、2012年度には48人の患者さんが運ばれてきました。

 重症外傷が多く
 患者さんの疾患で多いのは、交通事故やスキー、登山による重症の外傷です。内臓損傷、多発骨折、脳挫傷などがそれに当たります。病気では、脳卒中や心筋梗塞の患者さんが多く運ばれてきます。ドクターヘリがなかったら助からなかったと思われるケースも度々経験します。

 一方、10%程度の患者さんは、来院後に詳しく検査をしてみると大した病気やけがではなく、そのまま帰宅する人もいらっしゃいます。ただ、これはオーバートリアージ(軽症な人を重症とみなすこと)といって、重症の患者さんを見落とさないために、やむを得ないことなのです。

 では、ドクターヘリはどんなときでも出動できるのでしょうか。ドクターヘリは有視界飛行が前提のため夜間は飛べませんし、視界が悪い雨天や風の強いときもだめです。時間は原則8時半から17時までの間と決められています。

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 このような制約はありますが、ドクターヘリは間違いなく長野県の救急医療に大きな貢献をしています。ヘリポート近くに住む皆さんには騒音でご迷惑をおかけしますが、ご理解いただきたいと思います。
(2014年4月19日号掲載)

=写真=坂口 治(救急科部長=専門は救急科)
 
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