
信州の春到来を待ちきれず、3月中旬の平日、茨城県の筑波山(877メートル)へ出掛けた。日帰りハイキングのバスツアーがあるのを知り、天気を見極め、出発前日に申し込んで参加できた。
こんなことができるのも、長年の会社勤めを終え、自由の身になったから。「週末山ある記」のタイトルは、今回から「週末」を外してもらうことにした。
関東では「西の富士、東の筑波」と称される筑波山。山の姿が美しいうえに、富士山や霞ケ浦をはじめ関東平野を一望できるのが売り。「万葉集」にも詠まれ、最も標高の低い「日本百名山」である。
中野・小布施方面からの客を乗せてきたバスは6時40分に長野駅東口を出発。更埴、佐久平インターでさらに客を拾い、総勢21人に。全員中高年で、女性同士が多い。

途中、2カ所のパーキングエリアで休憩を取りながら、上信越道から北関東自動車道をひた走り、11時には山腹の筑波山梅園に到着。芳香が漂う中、約千本の白梅、紅梅を見て春を満喫。梅祭りの舞台では、当地の名物「ガマの油売りの口上」が人気だった。
梅園から程近い筑波山神社で登山の安全を祈願し、宮脇駅からケーブルカーに乗り込む。歩けば1時間半の行程を、わずか8分で山頂駅へ。駅舎を出ると、西側に男体山(なんたいさん)(871メートル)が、東側に女体山(にょたいさん)がそびえ立っている。その間の御幸(みゆき)ケ原には展望台や売店が立ち並ぶ。
まず男体山に登る。日陰に雪があるものの、15分ほどで山頂へ。立派な社があり、イザナギノミコトが祭られていた。同じ道を下り、御幸ケ原のベンチで昼食を取って女体山へ向かう。
途中、ブナ林の中に「ガマ石」がお目見え。大きなカエルが口を開けているようだ。女体山の山頂にも立派な社がある。こちらの祭神はイザナミノミコトか。「日本百名山」の石柱が立つ山頂部は観光客でいっぱいだ。
社の脇から急な下りに入る。岩場が続いた後、ぬかるんだ道は雪が凍っていて滑りやすい。しばらく進むと、「大仏岩」「出船入船」「母の胎内くぐり」など、ユニークな名の奇岩怪石が次々に現れる。

圧巻は「弁慶七戻り」=写真下。頭上から巨岩が落ちそうになっている場所をくぐり抜けねばならない。弁慶も7回ためらったという場所を、意を決して駆け抜ける。
そこから先はルンルン気分の下り道。女体山から1時間余で集合場所のつつじケ丘大駐車場に到着し、近くのホテルで入浴。帰路は15時50分に出発、同じコースを走って長野駅東口に20時20分に着いた。 (横前公行)
=写真=観光客でにぎわう女体山の山頂