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043 イスタンブール ガラタ橋 釣り人たちの姿が名所に~

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 イスタンブールの俗世界の名所は、何といってもガラタ橋で釣り糸を垂らす人々の姿だ。金角湾の口元に架かるガラタ橋の両側で、連日釣りをしている人はざっとみて200人はいる。

 ガラタ橋は、旧市街地のエミノニュと、新市街地のカラキョイを結ぶ。長さ446メートル、幅25メートル、厚さ平均3メートルと立派な橋だ。路面電車や車が中央を走り、両隅の歩行者道路の一角を釣り人が占有する。周囲にはイェニ・ジャーミィやリュステム・パシャ・ジャーミィなどもある。

 イスタンブールを舞台に、2年前に製作されたフランスのアクション映画「96時間 リベンジ」で、上空のヘリからガラタ橋が見える。そこでもあきれるほど居並ぶ釣り人が糸を垂らしている。

 釣果はアジやボラで、体長は最大で30センチもある。観光客は釣り人をバックに、記念写真をパチパチと撮っている。後ろにモスクやガラタ塔などが入るから、立派なイスタンブールでの記念写真になる。

 春夏秋冬、晴雨を問わず、ここには人が絶えることがないという。引退した人たちには絶好の気晴らしだ。慣れたもので、釣り人は日本人とみると「アジ、アジ」と大声を出している。観光船の航路には釣り糸を垂らさない暗黙のルールもある。

 カラキョイ側では魚市場と魚の軽食堂が軒を連ね、釣りざおやその固定具も売ったりレンタルしたり。橋は二層構造で、下の階はシーフードレストランだ。

 逆に旧市街のエミノニュ側は、海賊船のような3艘(そう)の船。そこは名物鯖(さば)サンドの店で、売り子も日本人とみれば「サバ、サバ」と声を掛ける。とれたてのサバを鉄板で焼いて野菜で挟み、さらにかためのパンに挟んで6トルコリラ(約330円)。レモン汁と塩を振りまいて豪快に食べる。話によると「かつて食費に窮した低所得層の間で、栄養と食欲を満たすために普及した」とか。

 もともとガラタとはギリシャ語で「牛乳」の意味だ。東ローマ帝国のビザンチン時代には、ガラタ地区の背後にある草原に牛が放牧されていたことにちなむ。ボスポラスが「牛の通路」からきているように、ここでは牛を語源にした言葉が多い。

 それにしても、傍らにバケツを置いて終日釣りをする人たちの様子はほほ笑ましくもある。「生臭い匂いが嫌いだ」という人もいるが、「ここで釣り糸を垂れることが夢だった」という日本人旅行者もいた。ともかく、世界中に自称「釣りキチ」はいても、バックに巨大なイスラム・モスクを従えるガラタ橋の光景は、旅行者の憧れの場であることは確かだ。
(2014年5月24日号掲載)

=写真=毎日釣り糸を垂らす人たちが集まるガラタ橋
 
ヨーロッパ美の旅