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058 憲法音頭 ~新生日本へ夢を生き生きと~

  憲法音頭
    サトウハチロー作詞
    中山晋平作曲

一、おどりおどろか 
  チョンホイナ 
  あの子にこの子
  月もまんまる
  笑い顔
  いきな姿や
  自慢の手ぶり
  誰にえんりょが いるものか
  ソレ チョンホイナ ハ チョンホイナ
  うれしじゃないか ないか
  チョンホイナ

      ◇

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 飯縄山や黒姫山、いわゆる北信五岳が一望できる。遠くに山桜、近くにリンゴ、桃の花、足元に菜の花が競い合っている。

 広々ひらけた穀倉地帯、延徳田んぼの東寄り、のどかな山裾の道をたどった。長野電鉄延徳駅から歩いて20分足らず、〝童謡と唱歌のふるさと 信州なかの〟を象徴する中山晋平記念館がある。

 中野市大字新野(しんの)。青い屋根が目を引く建物だ。五線譜をかたどった門が訪れる人を出迎える。十数個の鐘を備えたカリヨンであり、朝の9時から夕方の5時まで、毎時ごとに「カチューシャの唄」や「あの町この町」など晋平の代表的なメロディーを奏でている。

 中に入って自分の目で確かめたいものがあった。1947(昭和22)年5月に製作された「憲法音頭」のレコードである。何の変哲もない1枚の薄い円盤だけれども、日本の戦後史に刻まれた一こまが秘められている。

 この年の5月3日に日本国憲法が施行された。第2次世界大戦に敗れて2年、新しい国づくりの始まりだ。

 政府が先頭に立った新憲法の精神の普及活動が、大々的に展開される。学者や文化人を動員した全国津々浦々に及ぶ講演会の開催、小冊子「新しい憲法 明るい生活」の2千万部刊行などなどだ。

 こうした雰囲気の中で「憲法音頭」は誕生した。盆踊りさながらに歌い踊りつつ学ぼうというのだ。「リンゴの唄」などの詞で人気のサトウハチロー、「東京音頭」はじめ多くの音頭を手掛けた中山晋平。2人がコンビを組んだところにも力がこもる。

 4番まであり、〈古いすげ笠 さらりとすてて〉〈光りかがやく 新日本〉...。明るい詩句と軽やかな音調が、新たな国民生活への意気込みを表している。

 とはいえ現実の厳しさは容赦しない。国家主義と軍国主義から国民主権、平和主義へ憲法が描いた理想は、東西冷戦の国際的な緊張下、国内外の政治の波にもまれる運命に陥る。たちまちにして「憲法音頭」も、忘れられた存在への道を歩んだ。

 あれから67年。いま小さなレコード盤が辛うじて、憲法が初々しく光彩を放ったころを思い起こさせる。ケースに納まった傍らには、踊りの振り付けの絵も展示してある。

 手の動きや足の運びをじっと見詰めていると、あたかも動画のように踊りの輪が回りだす錯覚にとらわれた。

 〔「われらの日本」〕
 「憲法音頭」のレコードのもう片面に吹き込まれ、対を成した歌。〈平和のひかり 天に満ち〉で始まり、「新憲法施行記念国民歌」とされた。
(2014年5月3日号掲載)
 
愛と感動の信濃路詩紀行