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32 五輪の成果 (上) ~運営は51億円の黒字 記念基金で有効活用~

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 長野冬季オリンピックの運営費は、NAOC(長野冬季五輪組織委員会)のまとめで、収入がCBS(米国)などのテレビ放映権354億円、企業などのスポンサー収入315億円、入場券販売105億円、協賛宝くじ100億円、募金・寄付金など96億円で、その他と合わせて1142億円でした。

 これに対して支出は、競技施設・選手村・メディア村などの仮設費207億円、国際映像制作など広報報道費86億円、競技・会場運営費159億円、人件費110億円など総額1091億円で、差し引き51億円の黒字となりました。

 為替変動に一喜一憂
 ただ、テレビ放映権など外国との契約は原則ドル建てで、閉会式の日の為替レートで決済することになっていました。そのため、円高だと赤字になりかねないので、正直ヒヤヒヤものでしたね。

 1995(平成7)年春には、1ドル=79円台になり、試算すると数十億円の赤字になることが分かり、肝を冷やしました。そのころは昼のテレビニュースで知る為替変動に一喜一憂。1円の円高・円安で数億円のプラス・マイナスになり、商社などの経営者の心境がよく分かりました。

 そこでNAOCは、小林實事務総長を中心に宝くじ収入を増やしたり、思い切った経費削減に努めるなどしました。幸い、閉会式の日の為替レートは1ドル=128円で、円安となり安堵(あんど)しました。

 黒字額の51億円については、県と長野市がNAOCに25億円ずつ出資していたので、それぞれに返済するという考え方もありました。

 しかし、せっかく成功した長野五輪の成果として、長野オリンピック記念基金をつくり、オリンピックムーブメント促進のために活用することになりました。五輪後12年間にわたり、スキー、スケート、アイスホッケー、ボブスレー・リュージュ、カーリング、長野オリンピック記念マラソンなどの県内競技大会に、約21億円の補助金を出しました。

 さらに県外競技大会に6億円、選手育成強化に13億円、長野オリンピック記念イベントに2億円などを支出し、有効に活用できたと思います。12年目に残金は長野市に寄付し、基金は解散しました。

 98年6月4日、スペインのセビリアで開かれたIOC(国際オリンピック委員会)・ANOC(国内オリンピック委員会連合)総会に、長野五輪の成果を報告するため吉村午良知事と私が出席しました。

セビリアで報告
 ここで五輪成功への感謝とお礼を申し上げ、有形無形の資産の蓄積とオリンピックムーブメントの促進を図ることを報告し、大きな拍手で了承されました。

 レセプションには、アパルトヘイト撤廃運動でノーベル平和賞を受賞した南アフリカのマンデラ大統領も出席しておられ、スピーチが終わると全員起立して拍手をし、大変人気がありました。

 その後、マンデラさんは出席者の間を握手して回ったので、私もしっかり手を握りました。27年間も投獄されていたというのに、意外に柔らかく温かい手の感触でした。

 5大陸でまだオリンピックが開かれていないのはアフリカだけです。開催国はエジプトか南アといわれ、IOCもアフリカ開催を熱望しています。南アはサッカーのワールドカップを開催しましたが、いずれ夏季五輪を開催すると思います。
(2014年6月28日号掲載)

=写真=セビリアでのIOC・ANOC総会で長野五輪の成果を報告
 
塚田佐さん