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044 イスタンブール 考古学博物館 世界屈指 百万点を所有~

 学生時代に競歩で活躍し、いま世界史に情熱を持つ若い社会科教諭がいる。大学生の時に、イスタンブールに1週間滞在した経験があり「あそこの博物館には世界最古の平和協定書がありますよ」と言った。

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 それは「カデシュの条約」と呼ばれる。紀元前1285年ごろ、古代エジプトと今のトルコ東部・ヒッタイトとの間で交わされた平和同盟条約だ。粘土でできている=写真右。破損している部分はあるが、文字ははっきり見てとれる。米ニューヨークにある国連本部にはレプリカがあるほどだ。

 余談だが、国連本部には平和にちなんだ贈り物が各国から寄せられている。アメリカは月の石、ロシア(旧ソ連)はスプートニクの模型。日本からは各国のコインが埋め込まれた釣り鐘だ。

 協定書があるイスタンブール考古学博物館は、トプカプ宮殿の入り口近くにある。広大な宮殿に歩き疲れた観光客の姿は少ない。しかし、トルコ国内の全博物館が持つ文化財の3分の1に当たる百万点を有する世界屈指の博物館なのだ。正しくは考古学博物館本館と古代東方博物館・装飾タイル博物館の総称だ。

 数ある秘宝のうち、もう一つの見ものは「アレキサンダー大王の石棺」=写真下。紀元前4世紀後期のシドン王の大理石の棺だ。アレキサンダー大王がペルシャ軍と戦うところが彫刻されている。貴重な作品のため、厳重にカバーが掛けられている。

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 アレキサンダー大王はギリシャの地方都市マケドニアの人。ギリシャの都市や神殿が攻撃、破壊されたリベンジが目的で、わずか歩兵3万人、騎馬隊5万人を率いて小アジアを攻めた。

 この後、古代シリアやペルシャ海軍の基地を攻略。紀元前331年にはペルシャ本国をたたいた。彫刻はその場面だ。紀元前324年にはバビロンに凱旋。しかし、英雄は32歳で夭折。大王の功績はヘレニズム文化を西洋にもたらしたことだと言われる。

 この石棺は元来カラーだった。わずかに彩色が残っている。館内には模型も展示されていて興味深い。ここには、アレキサンダー大王の立像や頭部の像も展示されている。

 見応えがある割に見学者が少ない悩みを反映しているのは、路面電車沿いの入り口に「考古学博物館へ無料送迎車」が客待ちで待機していたことだ。みなトプカプ宮殿にまっしぐらなのだろう。これほどの歴史的価値があるのだから、考古学の地味な存在からブレークさせて脚光を浴びるようにする工夫を待ちたい。 
(2014年5月31日号掲載)
 
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