063 子宮頸がん ~早期の放射線治療 手術と同じ成績に~

 体のどこにできたがんでも、比較的初期の場合は手術を行い、手術ができないほど進行していれば、放射線治療や抗がん剤治療を行うのが普通です。

 ただし、子宮頸がんの場合は少し異なります。このがんには放射線が比較的よく効くので、進行の度合いが同じなら、手術をしても放射線治療をしても、がんが治る確率は一緒なのです。

 もちろん、進行してしまって手術で摘出できない状態になれば、放射線しか治療法はありません。しかし、手術ができる比較的早期の状態でも、放射線治療を行えば手術と同じ治療成績が得られるのです。

少ない合併症
 さらに最近、手術より放射線治療の方が、治療に伴う合併症が少ないことが明らかになってきました。

 子宮頸がんの手術に伴う合併症で、最も深刻なのは術後の排尿障害です。程度の差はあれ、尿が出にくくなってしまいます。これは、がん細胞を残らず摘出するためには、膀胱(ぼうこう)へ行く自律神経をある程度犠牲にせざるを得ないことによるものです。放射線治療は、この排尿障害が起きないのが最大のメリットです。

 一方、放射線治療で困ることは、治療後しばらくたってから起こる膀胱や直腸からの出血です。5%くらいの発症率といわれ、いずれもその粘膜に放射能がかかることによって引き起こされるものです。輸血を要するほど深刻な出血になる場合もあります。

最適な治療法を
 では、どちらの治療法を選択すべきでしょうか。

 現在当院では、59歳以下で、手術時に神経を温存しやすいような小さながんの患者さんには手術をお勧めしています。60歳以上、あるいは60歳未満でも神経温存が難しくなるような大きながん(4センチ以上)の場合は、放射線治療をお勧めしています。

 子宮頸がんの放射線治療は、体外から放射線をがんに当てる外照射(リニアックという装置を使います)と、子宮内にイリジウムの針を入れて直接がんを焼く腔内照射(ラルスという装置を使います)の組み合わせで行われます。さらに最近では抗がん剤も同時併用することになっています。当院には、2013年3月に上越、北信では唯一のラルスが導入されました。

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 子宮頸がんの治療は、手術の方法が日本で発達してきた歴史的背景から、日本では手術にウエイトが置かれてきました。しかし様々な治療法が開発されている現在、患者さんにとって最も利益のある治療法を選択していく必要があると考えています。
(2014年6月7日号掲載)

=写真=森 篤(婦人科部長=専門は悪性腫瘍)

 
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