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29五輪閉幕 ~オリンピック旗渡す 肩の荷が下りる思い~

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 選手に好評だったオリンピック選手村は、長野市が後利用のために良好な住宅地として開発した川中島町の今井ニュータウン(敷地面積19ヘクタール)に、28棟1032戸の集合住宅を建設しました。

 一帯は水田や桃畑などでしたが、地権者の協力で取得できました。JR今井駅の設置も決まり、県営住宅、教員住宅、警察職員住宅、市営住宅、民間分譲住宅など、あらかじめ五輪後の入居対象を決めて整備しました。今では当初の目標どおり、住みよい住宅地として活用されています。

好評だった選手村
 選手村にはレストラン、診療所、銀行、郵便局、宗教センター、ゲームルーム、フィットネスセンターなどを設置して好評でした。特に食事は西洋料理75%、日本料理15%、中華料理10%の割合で、1日当たり200種以上のメニューを用意し、宗教上の理由やベジタリアンなど食習慣の違いにも配慮して大変好評でした。

 名誉村長に近衛甯(やす)子さん、村長にはメルボルン五輪レスリング金メダリストの笹原正三さんに就任していただきました。ジャガイモのでんぷんを活用した食器「エコプレート」や、りんごジュースの製造過程で出る繊維を利用した皿などを使い、環境に優しい取り組みをアピールしました。

 1998(平成10)年2月22日、最南の地で開催された20世紀最後の冬季オリンピックも16日間の熱戦の幕を閉じる日を迎えました。オリンピックスタジアムに天皇皇后両陛下が着席され、18時からタレントの萩本欽一さんの司会で閉会式が始まりました。

 「一校一国運動」の子どもたちと各国の選手・役員が和やかに入場。真剣勝負も無事終わり、皆和気あいあいとしていました。国境や民族を超えた世界の平和を象徴する光景であり、毎回この雰囲気には感動します。県内の伝統の祭りが次々に披露され、会場は盛り上がりました。

 ハイライトは、次回開催都市・米国ソルトレーク市のコラデーニ市長と前夜リハーサルをしておいたオリンピック旗の引き継ぎです。長野市長の私からIOC(国際オリンピック委員会)のサマランチ会長に手渡したオリンピック旗は、さらにソルトレーク市長に渡されました。

 リハーサルでアドバイスしておいたとおり、コラデーニ市長はオリンピック旗を高々と掲げてステージ上を一回りし、大観衆の歓呼に応えました。間近で見ていた私は、前回開催都市リレハンメルでの緊張したオリンピック旗受け取り場面を思い出しながら、肩の荷が下りる思いでした。

 その直後、会場内にソルトレーク開拓時代を思わせる馬に乗った西部の人々が登場。駅馬車も姿を現し、馬と共に走り回りました。スクリーンには「SeeYou in 2002」の文字が浮かんでいました。
「アリガトナガノ」

 吉村午良知事の県民への感謝の言葉に続き、サマランチ会長から「史上最高のオリンピック」とたたえるあいさつがあり、最後に「アリガトナガノ サヨナラニッポン」の言葉で締めくくったのが印象的でした。

 そして、会場が一体となって中野市出身の高野辰之作詞「故郷」を大合唱。矢継ぎ早に打ち上げられごう音と共に夜空を彩った5千発の花火の下で、選手・役員、観客、ボランティアら全員が「WAになっておどろう」を心ゆくまで楽しみ、閉会式は19時40分に無事終了しました。
(2014年6月7日号掲載)

=写真=閉会式でオリンピック旗を引き渡す
 
塚田佐さん