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046 イスタンブール カーリエ博物館 ~ビザンチン美術の宝庫~ 

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 イスタンブールでもアクセスが悪い博物館だ。それもそのはず、「カーリエ」は「郊外」「田園」を意味するギリシャ語が語源だ。

 ここを訪ねようと、バレンス水道橋から歩いて一時間余。トルコ人に聞いた「すぐそこ」がすこぶる遠かった。疲れ果ててたどり着いた小ぢんまりした旧修道院はしかし、来てみる価値はあった。

 内部のフレスコ画とモザイクによる宗教画であふれ、14世紀のビザンチン美術の宝庫だ。所々に破損はあるが、キリスト教美術の黄金のモザイクなどは目を見張る。特に二つの壁画に感動した。

 一つ目は、南側の小さい円蓋に預言者やイスラエルの王など、24人の人物に囲まれたキリストが描かれていることだ=写真。このような構図を見たのは初めてだった。

 もう一つは南側の小礼拝堂。ここに二つのフレスコ画がある。そのうちの一つが「復活」。なんと左右にある棺(ひつぎ)から、人類の祖先のアダムとイブを中央のイエス・キリストが命を復活させるというもの。その背後でキリストの使徒や聖者がこれを見守っている。

 この礼拝堂は、ある人物が葬儀用に増築した。彼の名はメトキテス。皇帝の内部抗争に巻き込まれ、財産を没収されて牢獄生活に。晩年に釈放されたが、ここの修道院でひっそりと暮らし、1331年に他界、ここの礼拝堂に埋葬された。

 アダムとイブの「復活」の対に「最後の審判」もあり、キリストの左右に、聖母マリアと洗礼者ヨハネ。こんな美しい礼拝堂を建てたメトキテスは、きっと神に導かれて、天国にのぼったに違いない。

 館内の職員が「ここは郊外ということもあって、あまり日本人の観光客は来ない。どんどん紹介してね。フラッシュを使わなければ、自由に写真も撮れます」。

 退館まで3回も館内を回ってその美しい壁画やモザイクを堪能した。その後、前にある野外のレストランで温かいお茶(チャイ)を飲みながら、行きに1時間以上も歩いた疲れを癒やし、満足感にひたった。
(2014年7月26日号掲載)
 
ヨーロッパ美の旅