日本人の三大死因はかつて、がん、心疾患、脳血管疾患でしたが、2011年に肺炎が脳血管疾患を抜いて第3位に浮上しました。高齢化が一因と考えられていますが、肺炎がより身近な病気になってきたことを意味しています。
菌やウイルスが肺に
肺炎は、肺に炎症を起こしている状態の総称です。特殊な原因のものもありますが、単に「肺炎」という場合、病原微生物(病気を引き起こす菌やウイルス)が肺に入り、感染した状態をいいます。国内の肺炎で頻度の高い原因微生物として、肺炎球菌、インフルエンザ菌、マイコプラズマ、クラミドフィラなどが挙げられます。
肺炎の代表的な症状には発熱、せき、たん、呼吸困難などがありますが、必ずしもこれらだけではありません。特に高齢者では、典型的な症状が見られず、「なんとなく元気がない」「食欲がない」「ボーッとしている」など、漠然とした症状のことも多く、受診や治療の遅れにつながることがあるので注意が必要です。
医療機関では、症状や診察所見のほか、胸部レントゲン写真、血液検査、喀痰(かくたん)検査などを行い、肺炎と診断すると抗菌薬を投与します。入院が必要かどうかは、意識状態や呼吸・循環動態、脱水症の有無、年齢や生活状況などから総合的に判断します。
1~2週間で改善することが多いですが、病状や基礎疾患の有無によって経過に差が出ます。肺炎にかかりやすいのは、高齢者や乳幼児、糖尿病、心不全、慢性呼吸器疾患、慢性腎不全、肝硬変などの合併症のある人、喫煙者や多量飲酒者、免疫を抑える薬を投与されている人などです。こうした人は重症化もしやすいので注意が必要です。
誤嚥(ごえん)にも注意
口腔や咽頭内に存在する細菌や食べ物が誤って気管に入ることで、嚥下(えんげ)(誤嚥)性肺炎になることがあります。これは飲み込みの機能が低下している高齢者、脳疾患のある人、手術や全身疾患で体力が低下している人などに生じやすく、こうした人は食事の形態や食事の際の姿勢、食べ方(詰め込まずに集中してゆっくり食べる)などに工夫が必要です。
肺炎を予防するためには、外出後の手洗いやうがい、口腔内を清潔に保つこと、適切な睡眠、栄養補給、運動など規則正しい生活を心掛けましょう。
予防接種も有効です。インフルエンザの予防接種を受けることで、インフルエンザ後肺炎のリスクを下げることができます。また、肺炎球菌ワクチンは、肺炎の原因として最も頻度の高い肺炎球菌に対する抵抗力を高めて肺炎を予防します。

日頃から予防を行い、風邪をひいた後に長引くせき、高熱、膿性痰、息切れ、胸の痛み、悪寒などの症状がみられる時は、早めにかかりつけ医に相談しましょう。
(2014年8月2日号掲載)
=写真=吉池文明(呼吸器内科科長=専門は呼吸器)