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048 イスタンブール ナザールボンジュウ 魔物をはね返す「青い目玉」

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 「トルコでは、赤ちゃんが生まれると『醜い、醜い』と言います」と、ホテルのスタッフが私に言った。これは褒め言葉だそうだ。

 イスタンブールを歩いていると、やたらに「青い目玉」が目に付く。丸く青いガラスの中央にもう一つ、青い目が描かれている「ナザールボンジュウ」だ。
 ナザールは「邪視」とか「悪魔の目」、ボンジュウとは「ガラス玉」のこと。嫉妬やねたみによる悪意の視線からの邪悪な魔物をはね返すという魔除けだ。

 紀元前の昔から地中海や中東の地方では、邪悪な視線にさらされると不幸になるという民間信仰がある。迷信ともいえるが、トルコでは特に根強い。それゆえ、かわいい赤ちゃんが嫉妬などからひがまれないように、「醜い、醜い」と言って、不幸が訪れるのを防ぐのだという。

 赤ちゃんが生まれると、ナザールボンジュウ入りの金貨を付け、住宅の購入など大きな出来事があると、入り口に大きな「青い目」を飾ることも多い。一種のお守りだ。沖縄のシーサーやパワーストーンのようなものといえる。

 イスタンブールでは家の門や玄関のほか、車内やキーホルダーをはじめ、ブレスレットやイヤリング、携帯電話のストラップから観光施設や宮殿などの木の幹、枝に至るまで飾ってあった。トイレにもあったし、飼い犬や猫の首回りにもあった。

 私は、気のいい店員たちがいる文具店にあったナザールボンジュウが気にいった。毎日のように品定めをしている私に、彼らは優しく声を掛けてきた。「ナザールボンジュウのガラス玉が何かの拍子で割れたら、それは私たちに降りかかってくる災いを肩代わりしてくれたのだと、信じている」と説明してくれた。
 私は、仲間や教え子らへのお土産として、この魔除けをあげたのだが、こぞって大喜びしてくれたのが予想外だった。「不気味」と思う日本人も多いからだ。

 毎朝6時に起きて近くのチャイ(お茶)の店に通い、別れる時に固く再会を約束した夫婦、到着した日に知り合いアイルランドに帰国した家から直接メールをくれた女性、夜遅くまでクイズ合戦をした黒海付近出身の新婚ホテルマン...。忘れ難い思い出ばかりである。

 そんな中、面白いトルコ語を一つ知った。トイレの扉にある「男」「女」の文字で、男性がBAYと書いてバイと読む。女性はBAYAN、発音はバーヤンだ。
(2014年9月13日号掲載)

写真:店頭に並ぶナザールボンジュウ
 
ヨーロッパ美の旅