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38 スイス・アルプス(下) ~グリンデルワルトを拠点に~

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 3泊したツェルマットを後にし、次はグリンデルワルトへ。ここでは6泊し、張り巡らされた登山鉄道やロープウエーなどを使いトレッキングを楽しんだ。

 到着後2日目は、正面にアイガー(3970メートル)、メンヒ(4099メートル)、ユングフラウ(4158メートル)を望むメンリッヘンへ。全長6.2キロのロープウエーで40分。眼下には、緑一色の牧草地に村の家々が点在する。

 ここから向かいの鉄道駅クライネシャイデックまでのトレッキングは実に気持ちがいい。広々とした丘陵地帯で、お年寄りやベビーカーを押す若夫婦もいる。

 さらにヴェンゲン方面へ歩く。草原を進むと突然、「ドドーン」と雷鳴のような音が響く。向かいの山の一部に雪煙が上がっている。氷河が崩れた音なのだ。地球温暖化を目の当たりにした。

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 大きな道に出たところで、雨が降ってきた。このころ、長時間歩行で女性1人が歩けなくなり、タクシーを呼ぶか、誰かに助けを求めることに。先行したメンバーが薪小屋の人と交渉。若い娘さんが運転するトラクターがやってきて、3人の女性を荷台に乗せ、最寄りの駅まで運んでくれて事なきを得た。

 3日目は朝から天気が思わしくないため、ラウターブルンネンの先のトリュメルバッハの滝見物へ。氷河が解けた水がここに集まり、毎秒20トンの水流が岩穴をうがち、渦を巻きながら岩盤の中を流れ下る光景は壮観だ。

 午後は天気が回復したのでヴィルダースヴィルまで下り、電車でシーニゲプラッテへ。ここでは色鮮やかな多種類の花を堪能。ブリエンツ湖を見下ろす高台ではシマヘビに驚いた。

 4日目も雨模様のため、ラウターブルンネンからミューレンへ。ミューレンでは、上部のアルメントフーベルで高山植物園を見て戻ったところ、1時間後に駅前から祭りのパレードがあるという。待つ間には、白ワインの振る舞いも。

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 陽気な楽団や牛の列、着飾った少女らが次々に出発し、最後に力自慢の男たちが一抱えもあるカウベルを左右に振りながら続く。思いがけず、スイスの純朴な祭りを見物した。

 好天の5日目は待望のユングフラウ・ヨッホへ。登山電車でクライネシャイデックへ行き、そこで乗り換えた電車は間もなく、アイガーとメンヒの山腹内に入る。掘削に16年かかったというトンネルだ。途中、岩壁から外を見られる展望場が2カ所あり、5分停車の間に観光客がワッと群がる。

 終点は鉄道で行ける欧州最高所の駅(3454メートル)。「トップ・オブ・ヨーロッパ」と呼ばれる。さらにエレベーターでスフィンクス展望台(3573メートル)に上ると、真っ白なメンヒとユングフラウが目の前だ。眼下には万年雪の雪原が広がり、全長20キロのアレッチ氷河が長い帯を描く。

 昼食後、グリンデルワルトへ戻り、今度はロープウエーでフィルスト展望台へ。ここからバッハアルプ湖まで歩く。湖面に映る牛と周囲の山の風景が、いかにもアルプスらしい。

 最終日はグリンデルワルトから程近いフィングステックへ。緑の村を見下ろすゴンドラを降り、崖沿いの道を歩いて「下の氷河」を見に行く。帰路、野生のエーデルワイスを見つけ、歓声が上がった。

 ※スイスアルプスの詳細は後日、東海周二さんが「ヨーロッパ美の旅」スイス編で取り上げる予定です。
(2014年9月6日号掲載)

=写真1=至る所で壮観な山岳展望を楽しめるトレッキング
=写真2=ユングフラウ・ヨッホのスフィンクス展望台(後方はメンヒ)
 
中高年の山ある記