065 非アルコール性脂肪性肝炎 ~半数進行性でがんも 最も重要な体重減

 脂肪肝は、欧米では代表的な肝臓病の一つでしたが、日本ではここ30年くらいで急増してきました。肝臓は吸収した栄養から中性脂肪をつくり、その一部を細胞内に蓄えていますが、これが過剰にたまると脂肪肝になります。
 脂肪肝の原因はアルコール性のものと非アルコール性のものに、大きく分けられます。このうち、アルコール性脂肪肝は、飲酒による肝障害の初期段階として見られ、進行すると、慢性肝炎や肝硬変へと進行します。
 一方、酒を飲まない人も肥満、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を基にして脂肪肝になることがあり、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼んでいます。

60歳以上などに多く
 これまでアルコールを飲まない人の脂肪肝(NAFLD)は、ほとんど進行せず重い症状にはならないと考えられてきました。しかし最近の研究で、NAFLDの1割はアルコール性とよく似た慢性肝炎に進行していくことが分かってきました。これを非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)といいます。

 NASHは炎症や線維化を伴う脂肪肝で、その半数が進行性です。そして10~20%が肝硬変に進み、さらには肝臓がんを発症することが明らかになりました。
 NASHは60歳以上の人、女性、糖尿病や高血圧の人に多くみられます。詳しい原因は分かっていませんが、肥満や糖尿病、脂質異常症を背景に脂肪肝となり、その上にインスリンに対する抵抗性(高インスリン血症)や鉄分、酸化ストレス(生体中の酸化反応と抗酸化反応のバランスが崩れた状態)などの要因が加わることが考えられています。

基本は食事と運動
 診断は、まず超音波検査で脂肪肝の診断をします。そして、アルコール性を含む他の肝臓病がないことを血液検査などで確認し、肝生検による病理検査を行います。
 治すためには、体重を減らすことが最も重要です。糖尿病や脂質異常症を合併している場合にはこれらに対する薬物療法を行いますが、NASHそのものを改善させる薬はありません。

 減量の基本は食事と運動です。食事は、適正なエネルギー量を守り、脂肪は全体の20%以下に控えます。炭水化物は必要なエネルギー量に応じて減らし、良質なタンパク質と十分な食物繊維をバランスよく、規則正しく取ることが重要です。運動はウオーキング、自転車、水泳などの有酸素運動が効果的です。

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 脂肪肝と診断されたら早めに減量に努め、継続的に運動を行い、定期的に血液や超音波検査を受けることをお勧めします。
(2014年9月13日号掲載)

越知 泰英
長野市民病院消化器内科科長=専門は消化器、内視鏡

 
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