05 古間駅 ~愛情たっぷり 母ちゃん食堂

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 メニューに書かれたうたい文句、「いずれも母ちゃんの愛情入り」に偽りなし。古間駅から黒姫駅へ向かう中間、信越線の線路沿いにある「笑みの里 かあちゃんち」(信濃町古間)は、心も体も元気にしてくれる食堂だ。

 2年前、JAながの信濃町支所女性部の有志7人が開店した。毎朝、地元の農家が持ち寄る取れたての野菜を見て、その日の献立を決めるのが、代表の小板橋芙巳江さん(73)。「みんな元気のいいおばちゃんだけれど、私が一番だね」と笑う。「豆腐はステーキにするか」「葉っぱはみそ汁に入れよう」。てきぱきとメンバーに伝え、自らも調理場を動き回る。

 34歳の時に夫が他界。2人の子を養うため、農業の傍らホテルで働きだした。清掃係から、厨房で調理補助を任されるように。「調理の流れや、メニューの組み立てが頭にたたきこまれた」という。保健所で食事バランスの大切さを学んだこともあり、「今までの経験が全て役に立っている」と胸を張る。

 店の一番人気は「母ちゃん定食」。ご飯とみそ汁におかずが付いて、750円。この日は、サラダに野菜の天ぷら、鮭の塩焼き、厚揚げとたけのこなどの煮物、ごまあえなど全10品がお盆いっぱいに並んだ。米、豆腐、みそをはじめ、手打ちのうどん、そばも町内産。野菜はシャキシャキ、優しい味付けだ。

 会議や企業研修、高齢者施設などの配達弁当の注文が100食を超える日も。高齢者向けには軟らかく調理するなど、母ちゃんならではの心配りを欠かさない。
 気の利いたBGMの代わりに聞こえるのは、調理場の楽しいおしゃべりと笑い声だ。「うちの父ちゃんが店に来た時、『家ではこんなにたくさんおかずが出ないぞ』って笑っていたよ」「夜の営業? 勘弁してよ。昼はお客さんのため、夜は父ちゃんのため、だもんね」

 素朴な雰囲気に誘われ、毎日のように昼食を食べに来る人や町外からの客も多い。仕事で町内に立ち寄ることが多い上越市の会社員、神田洋一さん(41)も「この値段でこのボリュームは安い」と、多い時は週に一回顔を出す。
 素材の良さがあれば、余計なものは何もいらない―。料理も人も、きっと同じだ。


写真=高齢者向けの弁当を詰める小板橋さん(左端)ら


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古間駅(信濃町富濃)
 ◇標高 633・2メートル
 ◇開業 1928(昭和3)年
 ◇1日平均乗車人員 128人(2012年)
 1913(大正2)年に信号所として開設され、後に古間村(当時)の請願で駅に昇格。特産の信州鎌や木材、石材などの貨物もここから積まれた。87(昭和62)年から無人(簡易委託)駅。水田に囲まれた小さな駅舎で、地元の受託販売員が切符を売っている。上り列車は古間駅を出ると鳥居川に沿って山中に入り、牟礼駅までの6.5キロで146メートルの標高差を下る。

(村沢由佳)
(2014年8月1日掲載)