14 インタビュー ~しなの鉄道社長 藤井武晴さん

北陸新幹線(長野経由)金沢延伸に伴い、JR東日本から経営分離され、県や沿線自治体などが出資する第三セクター・しなの鉄道が運行する「北しなの線」(長野―妙高高原間)は、来年3月14日(土)に開業します。

 開業まで約5カ月。しなの鉄道は経営引き受けを前に、すでにJRへの社員派遣による研修や除雪車両の購入などを進めています。今後、運賃の認可申請や運行ダイヤの確定、住民説明会、車両の改修など、開業準備は最終段階に入ります。
 「北しなの線」がどんな姿になり、地元は地域の鉄道をどう支えていけばいいのか―。しなの鉄道の藤井武晴社長と、同社と県、沿線自治体、沿線住民の団体などが利用促進などに当たる「しなの鉄道北しなの線運営協議会」の砂山聡会長(信濃町)に聞きました。

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藤井武晴さん
[プロフィル] 大岡村(現長野市大岡)出身。八十二銀行、長野電鉄監査役を経て2012年から現職。

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 ―現在篠ノ井―軽井沢間を運営し、昨期まで9期連続で黒字、3期連続で乗客増加を達成している。

 生活路線としての利便性、観光路線としての魅力づくりを、沿線自治体など地域と一緒に進めた結果だ。通勤通学時間帯の輸送力強化や他の公共交通機関との乗り継ぎの利便性確保、割引フリーきっぷの販売などが功を奏していると考える。

 ―「北しなの線」は、県の需要予測(2012年度)で開業年の11キロ当たり平均利用者数が現在のしなの鉄道線の約5割とされ、厳しい経営が予想される。

 大事な観点は、(1)安全・安定輸送に徹する(2)利用促進を図る―の2つだ。安心・安定輸送のためにこの区間で大事なのは、降雪対策。当社は新たに除雪用車両を購入した。JRへはすでに保線や指令の社員、運転士を派遣している。開業までの冬の間に実際に乗務するなどして降雪時の対応を学び、万全を期す。

 利用促進については、地域と連携した取り組みが一層重要になると認識している。「運営協議会」を通じて、地域と一体になって取り組む。当社もニーズを踏まえた利用しやすいダイヤ設定やイベント開催などを検討するが、沿線の皆さんの自発的な取り組みが不可欠だ。

 ―県などの試算では、「北しなの線」の収支は、国が緊急時の貨物輸送経路確保を名目として当面行うとされる年約4億円の支援を受けて、ようやく均衡になる。

 国の支援は、「北しなの線」の運営が事業として成り立つ重要な要素で、これがなければ厳しいのは事実。ただこれを含め、何度もシミュレーションをした中で、経営は当面成り立つと判断している。

 ―開業後は、経営が厳しくなった場合の運賃値上げや減便が最も懸念される。

 地域の皆さんのニーズを無視して一方的に進めることはない。「北しなの線」は、現在のしなの鉄道線とは別に収支計算をし、公表していく。利用者にも実態を理解していただきながら、運営協議会などの場で協議して共に考えていく。そうすることで、その時々のベストプランで一緒にやっていけると思う。

 ―観光列車「ろくもん」は「北しなの線」も走るのか。

 「ろくもん」の活用方法は社内で協議中だが、「北しなの線」の沿線にも観光資源が多く、新たな観光面での活用は可能だと考えている。 

 ―開業まで半年を切った。

 地域の皆さまの期待に応えるべく努力していく。近江商人の心得「三方良し」(「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」)のように、「利用者良し」「地域良し」「事業者良し」でいきたい。お客さまの利用で地域が良くなり、それによって事業者が良くなる。一番は乗っていただくことだが、鉄道を利用しない人にとっても、地域にある生活上のインフラとして重要な位置を占める存在でありたい。