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051 スイス・ツェルマット マッターホルン 下 ~迫力ある雄姿望むコースへ~

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 2、3日の余裕がある滞在なら、ぜひ訪ねてほしいのがツェルマットからクライン・マッターホルンの展望台へのコースだ。最も迫力あるマッターホルンの雄姿=写真上=を間近に拝むことができる。

 このコースの難点は駅からのアクセスが遠いことだ。ツェルマットのメーンストリートであるバンホフ通り(駅前通り)を南下し、カトリック教会と山岳博物館の間を左折すると、共同墓地がある。その斜め前に、マッターフィスパ川に橋が架かっている。そこは天気が良ければ、南上方に見事なマッターホルンが見える絶景ポイントだ。

 川の右岸をさらに上流へ20分ほど上ると、クライン・マッターホルンへのケーブル乗り場だ。歩くと、駅から30分以上もかかるため、敬遠する人も多い。しかし、労が多いだけの価値はある。
 ただし料金も張る。頂上までの往復なら1万円近くかかった。でも、スイスパスを使えば、半額になる。

 途中、フーリ駅やトロッケナーシュテーク駅でロープウェーに乗り換え、頂上のベルク駅(標高3820メートル)に着くと、そこはスキー場だ。一時、スキー部の夏合宿に日本のチームが利用したこともある。4年前に来た時は好天だったので、レンタルスキーで滑り降りたい衝動に駆られた。今年は悪天で吹雪に視界が遮られ、エレベーターで展望台に向かったものの、震えただけだった。

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 このコースでは、途中のシュバルツゼー近くにあるレストランと休憩所が心地よい。シュバルツゼーは「黒い湖」という意味だ。行きかうロープウエーやマッターホルンを目指すクライマーを眺めたり、湖を見たりしながら、マッターホルンの巨体を仰ぎ見ると、「憧れのツェルマットの最深部に来た」という実感があらためて湧く。

 黒い湖を一周した。相変わらず小魚の群れが多い。対岸の小さな礼拝堂を訪れ、久しぶりに内陣に入った。日本の道祖神にも思えるキリストの磔刑(たっけい)彫刻がわれわれの安全を見守ってくれているようだ。

 ここでアンドラ公国から来た若いカップルに話し掛けられた。アンドラはフランスとスペインの間にあるピレネー山脈の麓にある。もう30年も前だが、訪ねたことがある。

 「なぜスイスはカトリックの信者がこんなに多いのだ」と聞いてきた。確かに16世紀前半には宗教改革が起きたが、かつて犠牲者を出してローマ法王を守り抜いたり、フランス革命では傭兵(ようへい)として戦ったりしたために、バチカンの兵士はみなスイス人と説明した。記念にスナップ写真を撮り、今ではメル友。山の中でこんな出会いも楽しいものだ。
(2014年11月1日号掲載)

=写真=コース途中にある「黒い湖」
 
ヨーロッパ美の旅