胸部の聴診で、心臓内の血流に由来する異常音があると「心雑音」とされます。心雑音には、心臓弁膜症によるもの、先天性心疾患によるもの、病的ではないもの―などがあります。
弁に不具合がある場合
心臓は、収縮と拡張を繰り返して血液を全身に循環させるポンプです。4つの部屋からなり、一定方向に血液を流すために、部屋の出入り口に扉(弁)があります。ポンプとして中心的な役割の部屋である左心室から見ると、全身に血液を送り出す出口の扉を大動脈弁、肺方面からの血液が流れ込む入り口の扉を僧房弁と言います。そのそれぞれで、うまく開かない狭窄症と、うまく閉じない閉鎖不全症があり、これらを組み合わせて「○○弁○○症」と称します。
これらの有無や程度は、主に心臓超音波検査によって評価します。弁膜症が重くなると、手術(弁置換術や弁形成術)で治療することになります。
最近、加齢に伴う変化で発症する大動脈弁狭窄症が増えてきました。言い換えると、大動脈弁狭窄症が重度になるまで長生きする人が増えたということです。年齢ゆえに、手術すべきかどうか、判断に悩む場合もしばしばあります。
その他の心雑音
先天性心疾患は、生まれつき心臓の構造に変化があるものです。近年は成人になってから先天性心疾患が見つかることは少なくなってきています。
病的ではない心雑音もあります。加齢によって人の外観が変化するように、心臓の形も変化します。左心室の出口近くで血液の通り道が屈曲すると、血流は乱流となり、心雑音が聞こえることがあります。多くの場合、病的な問題はありません。
また、貧血(血液が薄い状態)の人は心臓の中の血流が速くなり、心雑音の原因となることがあります。この場合は、心臓の検査よりも貧血の原因を調べることが必要です。ほかに、心筋疾患などが心雑音の原因となることもあります。

このように、心雑音が必ずしも重篤な心臓疾患に直結するわけではありません。健診で心雑音があると言われたら、まずは医療機関で心臓超音波検査を中心とした検査を受けてください。
(2014年11月1日号掲載)
=写真=丸山 隆久(循環器内科部長=専門は循環器)