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170 国際化 ~説明が難しい日本の宗教観~

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 本堂の大香炉前は「善光寺の今」を感じるのに、絶好の場所だ。多彩な外国人の姿と反応が興味深い。

 線香を投じた後の作法を説明してみた。

 「キャッチ スモーク(煙をつかんで)」「リペア バッドヘッド アンド ロングハート(あなたの悪い頭も、邪心も治ります)」。ジョーク好きの米国人は「オー マイ ゴッド(神様、すごいね)」と返してきた。ただし、神と仏の違いの説明までは、当方の英語力ではおぼつかない。

 1998年長野冬季五輪のころ、参拝者は欧米人ばかりだった。近年は韓国、中国、台湾やタイ、インドなどアジアの団体が増えた。「スキーや雪山見物で長野を訪れた」という人が多いようだ。

 スリランカの製茶研修生から話を聞いたことがある。インド洋の島国スリランカは、インドの南端に近く「インド大陸の涙」といわれる。旧名はセイロン。イギリスの植民地から独立、長い内戦を経て紅茶と観光を柱に近代化を模索している。

 長野市の県職員OB・松木房雄さんは年2回、3カ月ほどずつ、スリランカを訪れており、折り紙を教えるなどの活動をしてきた。日本が第二次大戦後、スリランカを援助したこともあってか、「自分が日本人だと分かると、途端に表情が緩んだ」など、人々は親日的だという。

 外務省ホームページの「各国・地域情勢」によると、スリランカは仏教徒が国民の70%に達する。葬儀や作法、夏祭りの踊りなど、日本と似たところがあり、にぎやかだ。

 ところが、隣のインドはヒンズー教徒が80%を超え、仏教徒の割合はキリスト教、イスラム教、シク教に次いで、わずか0.8%にすぎない。お釈迦(しゃか)様が仏教を創出したルーツの国だが、仏教史跡は釈迦の活躍した北部ヒマラヤ山麓の一部地域に残る程度だ。

 アジア各国の仏教徒割合は、タイ94%、ミャンマー90%。カンボジアは仏教が国教だ。香港、台湾は仏教、道教、キリスト教が混在。マレーシアは61%がイスラム教、フィリピンはキリスト教国とさまざまである。韓国は「宗教人口比率が53・1%で、うち仏教は42・9%」とある。仏教の国別濃淡は激しい。

 善光寺で大香炉から本堂を一巡りし、外国の人たちを大勧進や大本願へ案内すると、たわいないやりとりから、彼らの宗教観との違いが浮き彫りになる。

 「神と仏は、どう違うのか」「どちらが偉いのか」「神と仏は仲が良いのか」と質問された。

 家の中に仏壇と神棚の両方がある神仏混交で、クリスマスも楽しむ―。善光寺を訪れる外国人にとって、そんな日本のライフスタイルは不思議に感じるだろう。浅学の身にとって、説明するのに立ち往生する。
(2014年12月20日号掲載)

=写真=にぎやかに練り歩くコロンボの祭り(塚田正彦さん提供)
 
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