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054 グリンデルワルト周辺 メンリッヒェン ~圧巻は展望台からの眺望~

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 「スイス五名山」といわれるうち、アイガー、メンヒ、ユングフラウの三山がグリンデルワルトに面している。ベルナーオーバーラント(ベルン州の高地)三山と呼ぶ。グリンデルワルトはインターラーケン(「湖の間」の意味)から電車で36分ほど。快い響きの村は登山ブームの草分け的存在だ。

 日本人にグリンデルワルトの魅力を最初に伝えたのは槙有恒さん(1894~1989)だ。初めて東稜からのアイガー登頂を成功させ、地元の英雄でもある。また、旧安曇村と1972年に姉妹都市提携を結び、合併後は松本市が引き継ぎ、訪問団を送り合っている。

 駅舎はこぢんまりして屋根もないものの、駅前通りは華やかだ。夏になると、ホテルの下から上まで、ゼラニウムなど色とりどりの花が飾られる。

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 ここの売りは、何といってもトレッキング。私がいつも真っ先に向かうのは、メンリッヒェンからのコース。始発駅から終着のクライネ・シャイデック(「小さな峠」の意味)に向かう電車は登山客でごったがえす。わずか5分のグルントから、徒歩7分でメンリッヒェン展望台行きのロープウエー乗り場へ。

 ここの4人乗りロープウエーからは、30分以上も360度のパノラマを見渡せる。終点近くの草原には、マーモットの巣穴が幾つも見え、散歩する姿が見られるのがうれしい。

 終点の標高2229メートルにある展望台からは、右手にメンリッヒェン山頂への道を、正面に落差が300メートルにもなるシュタウプバッハの滝があるラウターブルンネンや美しいヴェンゲンの村を一望できる。

 圧巻は左手側の眺望だ。アイガーなど三山の雪を冠した威容が立ちふさがる。ここを正面に歩く1時間半のコースがお勧めだ。「いい所へ連れて来てくれてありがとう」と、案内するたびに言われる。

 このコースは、高齢者からベビーカーに乗せられた幼児まで来ることができるほど。ツツジ科のアルペンローズやチャボアザミなど、カラフルな高山植物群を見られる。

 だが、「かつては野生のエーデルワイスが咲いていたが、日本人観光客が競って摘んでしまったために今はない」という悲しい事実を、何度も現地の人々や地元に住む日本人から聞かされた。

 途中には、放牧牛がガランゴロンとカウベルを鳴らしながら草を食(は)んでいる。顔も肌の色も日本の牛とは違う。尖(とが)ったチュッケン山(2524メートル)が遮って三山は隠れるが、ホーネックの分岐に来ると、視界が開けて再びユングフラウなどの名山を望める。

 私はグリンデルワルト・ブリックという山小屋風のレストランで昼食を取ることもある。クライネ・シャイデックの駅舎やホテルの中景や、ユングフラウの雄姿の遠景をおかずに、ぜいたくな食事を満喫できる。ビールやワインのほろ酔い気分で10分ほど歩けば、もうクライネ・シャイデックの駅舎だ。
(2014年12月6日号掲載)

=写真=展望台には各国の観光客も。居合わせたイスラエルのグループ
 
ヨーロッパ美の旅