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02 守る人々 ~数百年間変わらぬ営み~

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 戸隠神社は、中社と宝光社に現在36ある聚長(しゅうちょう)家によって運営されている。聚長家は神仏習合の時代、顕光寺の最高権力者だった別当か、院坊の住職だった。明治時代初頭に還俗して神官となり、宿坊の主人を務めている。

 聚長の担う役割は多い。戸隠神社全体の運営や神事に参加し、太々神楽を学び奉納する。戸隠講の講社を取りまとめ、参拝に訪れる講員を自らの宿坊に泊めて神社との間を取り持つ。戸隠や鬼無里などにあるほかの神社の宮司を兼務する人もいて、春や秋の祭りシーズンには複数の神社を「はしご」することも。旅館経営者としては、自らマイクロバスを運転して観光客を送迎し、そばを打ってもてなす。学校の教員を兼務する人も多い。

 神社の意思決定機関は、年2回の聚長総会。ほかに、宮司と中社、宝光社各3人の聚長計7人による「責任役員」の会議が月1回開かれる。

 聚長家のうち「常勤」と呼ばれる神職は、宮司、禰宜(ねぎ)と、5人の権禰宜の計7人。社頭での祈祷(とう)やお札の授与、神社の事務などに当たり、参拝者の目に留まりやすい存在だ。
 戸隠神社は毎年、田植えの時季に豊作を祈る祈年祭(5月)、お盆ごろの例祭(8月)、豊作に感謝する新嘗祭(にいなめさい)(11月)などの祭りを行う。祈年祭は、全国的には2月に行うのが一般的だが、「農作業の開始が遅い雪解けを待たねばならない」とされ、戸隠では遅く行われている。

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 朝6時過ぎ、中社社殿に太鼓の音が響く。宿直の神職が行う朝拝だ。神前に米や酒を供え、太鼓をたたきながら、罪・けがれを払う「大祓詞(おおはらえことば)」を唱える。
 奥社・九頭竜社と中社、宝光社には、それぞれ神職が毎晩交代で宿直している。電気の通じていない奥社でも、社務所に神職が泊まり、炊いた飯を奥社と九頭竜社に供えて朝拝を行う。参拝者が書いた祈願串の内容を祭神に伝える夕拝と共に、神仏習合時代から一日も欠かさずに続けられている。
 権禰宜の一人、楠川裕一さん(54)は「聚長家に生まれ、地元の神様のおかげでご奉仕できることはありがたい」。数百年間変わらない営みが、戸隠の信仰を守り、つないでいく。
(2015年1月10日号掲載)


=写真=朝拝を前に神饌を供える楠川さん。この時期、外はまだ暗く、祝詞を上げる時の息は白い(12月25日6時30分、中社社殿で)