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056 グリンデルワルト周辺 ユングフラウ鉄道 ~終着駅舎は欧州最高地点~

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 駅に「トップ・オブ・ヨーロッパ」の看板。ユングフラウヨッホは欧州一の標高3454メートルにある駅舎だ。

 ユングフラウは「若い娘」を意味する。ヨッホは山と山を結ぶ鞍部のことで、山岳用語ではコルと呼ばれる。

 クライネシャイデックで、赤とオレンジ色の横じま模様のユングフラウ鉄道に乗る。1912年に全線開通した約9キロの登山鉄道だ。外国からのツアー客が真っ先に訪ねたがる景勝地だが、この鉄道の建設は筆舌に尽くしがたいほど困難を極めた。

 鉄道開設はこんなきっかけだったという。

 ―19世紀末、アドルフ・ツェラーという男が娘とミューレン周辺をトレッキングしていた。そこのカフェテラスでユングフラウを遠望しながらふと叫んだ。

「これだ、やるぞ」
 その日にプロジェクト草案を作り、クライネシャイデックを起点にして鉄道認可を申請した。様々な検証を経て、関係当局がついに認可。ツェラーは「ユングフラウ鉄道の父」と呼ばれた―

 ツェラーは完成を見ずに他界した。当初の工事は人と馬。突拍子もないことを始めたツェラーに、冷ややかな声も多かった。けれども、地元労働者も協力して、8年後にトンネル内の最初の駅、アイガーバントが完成した。4年の予定が16年にも及んだ。そうだろう、巨大なアイガーの腹部を貫通させたのだから。

 いま、ここはドル箱路線だ。ユングフラウヨッホ駅まで1万円。スイスパスを持っていた私たちでも半額の5千円だ。

 電車はトンネルの途中で、アイガーバント駅とアイスメーア駅に停車した。岩に穴を開けた窓からアレッチ氷河や、天気が良ければドイツ南部のシュバルツバルト(黒い森)が見える。氷河を含むこの一帯がアルプスとして初の世界自然遺産に指定された。

 終着、ユングフラウヨッホの駅から、氷の彫刻で飾られるアイスパレスを通過してエレベーターで昇ると、スフィンクス展望台に着く。年間2万人が訪れる場所だ。

 左手にメンヒ、右手
前方にユングフラウの山塊が目の前に迫る。「修道僧」という意味のメンヒは、若い女性ユングフラウを守るようにそびえている。すぐ下には、氷河トレッキングや犬ぞりのツアーなども見える。

 私たちの前で親と一緒に犬ぞりの順番待ちをしていた男の子が「気温の変化で雪崩の恐れがあり、中止する」というアナウンスで泣き出してしまった。
(2015年1月17日号掲載)

=写真=「トップ・オブ・ヨーロッパ」には世界中の旅人との出会いも
 
ヨーロッパ美の旅