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057 グリンデルワルト周辺 トリュンメルバッハの滝 ~雪解け水が洞窟内を落下~

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 麓に住む素封家が近くを子どもと散歩していると、岩壁の近くに音を聞いて「きっと中に何かあるにちがいない」と思い、この一帯を買い取った。掘削すると、とんでもない滝があった。これが類いまれな岩窟の滝発見の逸話だ。

 山の多いベルナーオーバーラント地方で異色なのが、ラウターブルンネンだ。ウェンゲンに通ずるこの駅は、目の前に飛沫(ひまつ)の滝「シュタウプバッハの滝」が見えることで知られる。300メートルもの高さから落下し、下では飛沫となってしまう。

 ドイツの文豪ゲーテがこれにインスピレーションを得て「人の心は水のごとし」の名詩をつくり、英国の詩人バイロンもこの滝に感銘している。

 ラウターブルンネンの駅から、ユネスコの世界自然遺産「トリュンメルバッハの滝」へ向かうシュテヘルベルク行きのバスは、いつも満員だ。

 バスから降りても滝が見えるわけではない。さらに離れた断崖の入り口に発券所があり、そこから発掘用エレベーターのトンネル・リフトで斜めに登る。1分もしないうちに洞窟内へ。

 アイガー、メンヒ、ユングフラウの三名山から氷河の雪解け水が、長い歳月を経て岩をうがちながら、落差300メートルを猛烈な速度で落下する。今でも岩を浸食しながら、ぶつかり合う音、落下する水の音が洞窟内で反響する。

 のぞき見る人たちも、落ちたら一巻の終わりとばかり、鉄製の柵にしがみついてへっぴり腰で見下ろす。流水域は24平方キロ。年間2万トンの堆積物を運ぶという。

 トンネル・リフトから降りると第6滝で、そこから階段を伝って登るのは、らせん状に見え隠れする滝を見るため。頂上にたどり着くまでには5層の滝と対面することになる。帰りはトンネル・リフトを使わずに階段を降り、比較的穏やかな落下の残り5つを見ながら出口に向かう。毎秒2万リットルの水が勢いよく落下している。雨ガッパ持参の人も多い。

 見どころはたくさんある。コークスクリューと名付けられたらせん状のジェットコースターもどきで、見学者から感嘆の声が上がる。

 アメリカから来た大学生は「グランド・キャニオンやヨセミテ国立公園など、私たちの国にも大きな滝や巨大な自然遺産があるけれど、洞窟内のこんな滝に、身近に接したのは初めて」と、感慨深げに話した。
(2015年1月24日号掲載)

=写真=すさまじい速さで流れ落ちるトリュンメルバッハの滝
 
ヨーロッパ美の旅