069 肘部管症候群 ~治療は比較的簡単 軽症なうちに受診を~

 「肘部(ちゅうぶ)管」は、肘の内側の飛び出た骨の後方にあり、肘を曲げる際に尺骨神経がずれて痛まないように守っている管です。

手にしびれなどの症状
 作りは頑丈ですが、容量に余裕がなく、加齢につれて出てくる骨棘(こつきょく)や、ガングリオン(ゼリー状の液体が詰まっている腫瘤)などがいったん肘部管の中に出てしまうと、尺骨神経を圧迫し、「肘部管症候群」になります。

 まず小指と薬指の小指側にしびれが出てきます。徐々に進んで運動神経まひになると、指をくっつけたり離したりする手の内在筋のまひが出てきます。そして、手のひらの小指側や親指と人さし指の間が痩せます。疲れやすくなったり、握力が小さくなったりします。進行すると、夜、手が痛くて熟睡できないこともあります。

 診断はこれらの症状に尽きますが、確定診断には、尺骨神経の神経伝導速度の検査が必要です。骨棘を見つけるためにはレントゲン、ガングリオンを見つけるにはエコー検査を用います。より詳しく、MRI検査をする場合もあります。

 原因を取り除く手術
 温めたり、肘を安静にしたりすることで症状が治まることもありますが、大きな骨棘やガングリオンが原因の場合には、温めても安静にしても、全く効果はありません。痛み止めの薬で痛みを取っても、神経を圧迫している状況は変わらないので、時間とともに悪くなる可能性があります。

 尺骨神経は、肘で神経が障害されたことによる症状が、30センチほど先の手に出ます。神経の回復は1日1ミリといわれますので、この距離が回復の遅れの要因(30センチ=300ミリ=300日)になってしまいます。

 しかし、幸いなことに治療は比較的簡単です。診断がつけば、手術で肘部管を解放して、ガングリオンがあれば切除します。神経の前方移行も極端に難しい手術ではありません。

69-iryo-0110.jpg
 逆に言うと、重症でも軽症でも、やれることはそんなにたくさんはありません。ですから比較的治りやすい軽症なうちに、専門医や専門病院を受診することをお勧めします。
(2015年1月10日号掲載)

写真=松田 智(整形外科部長=専門は上肢、末梢神経、マイクロサージャリー、肩関節疾患、難治性骨折)
 
知っておきたい医療の知識