スキーとスノーボードは同じ雪上を滑るスポーツですが、競技特性は異なります。
スキーは滑走時に体が前方を向いており、両足に1枚ずつ付いている板は強い力がかかると、外れるようになっています。また、ストックを両手に持ち、バランスを取ったり、ターンのタイミングを計ったりします。
一方、スノーボードは滑走時に体が進行方向に対して垂直(側方)に向いています。両足は1枚の板で固定され、基本的には板が外れないようになっています。また、両手には何も持たず、腕を広げ、腰を低く落とすことでバランスを取ります。
注意したい外傷
このような競技特性の違いから、スキーとスノーボードでは起こりやすい外傷が異なります。
スキーでは、下肢の外傷が多い傾向があります。バランスを崩してスキー板の内側のエッジに体重がかかると、膝に急激な屈曲とねじれの力がかかります。すると、「前十字(靱)(じん)(帯)(たい)」という膝の靱帯を損傷してしまいます。
また、片方の板の内側のエッジが雪面に引っ掛かって前方へ転倒すると、膝の内側の靱帯である内側側副靱帯を損傷してしまい、転倒時にブーツの上端ですねの骨を折ってしまう場合もあります。
上肢の外傷で多いのは、ストックによる親指の靱帯損傷です。ストックを握ったまま転倒してしまうと、親指の横(人指し指側)にある尺側側副靱帯を痛めてしまいます。
頭部外傷は、スノーボードの場合にスキーの5~6倍の頻度で発生します。緩斜面での転倒やジャンプで後頭部を打ちやすいためです。重症例では、スキーでは衝突による頭蓋骨骨折や脳挫傷、スノーボードでは転倒による急性硬膜下血腫が多く起こります。
けがの予防策
(1) ヘルメットやプロテクターの装着
重症頭部外傷を予防するにはヘルメットの装着をお勧めします。緩い斜面しか滑らない初心者も、エッジによる頭部や顔面の切り傷を防ぐために、頭全体を覆うニット帽を必ずかぶりましょう。ヒップパッド、エルボー(肘)パッド、リスト(手首)ガードなども、打撲の衝撃を和らげる効果があります。
(2 )コンディション
寝不足、過労、飲酒状態での滑走は控えましょう。
(3) トレーニング
前屈、ストレッチ運動による体幹の柔軟性、バランスボールを用いたバランス向上のトレーニングが有効です。

(4) 対人衝突事故防止
子どものスキーによる頭部外傷は、転倒よりも衝突事故によるものが多いので、周りの大人が注意を払いましょう。先に滑る人への配慮、追い越しの仕方、コースをふさがないなどの基本的なマナーをおさらいすることが重要のようです。
(2015年1月17日号掲載)
=写真=新谷りょう介(救急科医長=専門は救急科)