皆さんは、口の中にもがんができることを知っていますか。全てのがんのうち、口腔(こうくう)がんの割合は1~2%と非常に少ないのですが、2015年には、わが国で約7800人の口腔がん患者が予想されており、ほかのがんと同様、増加の傾向があります。
口腔がんの男女比は3:2と男性に多く、発生部位としては舌(特に舌縁)が最も多いとされています。
喫煙・飲酒など原因
口腔がん発症の危険因子として明らかなのは、喫煙と飲酒です。特に喫煙は口腔がんの最大の危険因子と考えられています。
そのほか、慢性的な刺激として傾斜した歯、虫歯でとがっている歯、適合の不良な歯の詰め物や入れ歯、歯肉炎やウイルス感染が発がんに関与しているとされます。
口腔がんの予防法を紹介しましょう。
(1)喫煙・飲酒はほどほどに
たばこの煙には約4000種類の化学物質が含まれ、その中に発がん性物質が存在します。飲酒に関しては、アルコールが分解される際にできるアセトアルデヒドに発がん性があるとされています。
(2)偏食をせずバランスの良い食生活を
たばこと同様に、香辛料や刺激物に含まれる化学物質も、多量に摂取し過ぎると良くありません。
(3)歯みがきやうがいを習慣にして、口の中を清潔に
歯肉炎(細菌感染)やウイルス感染も発がんに関与する場合があります。
(4)合わない入れ歯やかぶせ物、治療していない虫歯は放置せず治療する
傾斜した歯、虫歯でとがっている歯、適合の悪い歯の詰め物や入れ歯も原因になります。
怖がらずに受診を
口の中になかなか治らない傷ができたり、腫れ物ができたりしたら、どうすればよいのでしょう。通常、口の中の粘膜は1週間で新しくなります。口の中の傷や腫れ物が1週間以上治らない場合は、かかりつけの歯科医院や歯科口腔外科を受診してください。
その傷や腫れ物が口腔がんだった場合は、がんのできている部位や病期(進行度)、組織の特徴などを総合的に診断して治療方針を決めます。治療は、手術や放射線、抗がん剤などで行います。
治癒率は部位や病期によって異なりますが、口腔がん全体の5年生存率は60~70%です。初期の場合はほとんどの症例が治癒します。怖がらずにできるだけ早期に受診することをお勧めします。
(2015年2月7日号掲載)

酒井 洋徳(歯科・歯科口腔外科科長=専門は口腔がん、デンタルインプラント、歯科口腔外科一般)