073 喉頭がん ~最大原因は喫煙・飲酒 早期なら望める完治~

 首の前を触ると、三角形の甲状軟骨があります。喉頭はこの後ろにあって、声を出したり、食べ物が気管に入らないようにしたりと、日常生活で大切な働きをしています。

 喉頭がんはここにできるがんです。日本では年間約3000人の人が発症し、その多くは男性です。発症の最大の原因は喫煙と飲酒で、特に患者の9割以上に喫煙歴があります。

 喉頭のうち、声を出すのに必要な声帯の部分を声門といい、そこより上の部分を声門上部、下を声門下部と呼びます。喉頭がんは、そのどこにできるかによって症状に特徴があります。

 声門上のがん
 声門上のがんは、喉頭がんの30~50%を占めます。原因として、喫煙と飲酒のほか、熱い物や硬い物、刺激の強い食べ物を摂取することが挙げられます。

 症状は、初期には食べ物を飲み込む時の異物感やしみる感じ、刺さる、擦れるなどの痛み、いがらっぽさが出ます。がんが大きくなって声帯まで広がると、声のかすれが現れます。早期に頸部(けいぶ)のリンパ節に転移しやすいのも特徴です。

 声門がん
 声帯にできる声門がんは、喉頭がんの60~65%を占め、前述の原因のほか、声をよく使う職業の人もなりやすいといえます。

 初期から声がかれ、乾燥した声、ざらざらした声になります。たんやせきも出るため、「風邪が長びいている」と考え、放置されてしまうこともあります。進行すると声帯の動きが悪くなり、食べ物や飲み物が気道に入ってしまう誤嚥や、呼吸困難の症状が現れます。

 声門下のがん
 声門下がんは、喉頭がんのうち2~3%程度の比較的珍しいがんです。初期症状はほとんどなく、がんの影響が声帯まで及ぶと、声がれや誤嚥によるむせ、呼吸困難が現れます。進行してから発見されることが多いため、症状が出るころには頸部のリンパ節に転移していることもあります。

 早いうちに受診を
 喉頭がんは、その進行度により治療の方法が異なります。早期であれば放射腺治療で完治が望めます。手術が必要な場合でも、音声機能を残す方法が可能な場合もありますので、できるだけ早期に受診することが大切です。

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 喉頭の病変はファイバースコープで容易に観察できるため、これまでに述べた症状が数週間続く場合は、早めに耳鼻科を受診してください。家族にたばこを吸う人やお酒が好きな人がいたら、喉頭がんの症状が出ていないか気を付け、心配な場合は受診を勧めてください。
(2015年2月14日号掲載)

=写真=野村 康(耳鼻いんこう科部長=専門は耳鼻いんこう科、頭頸部腫瘍)

 
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