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04 太々神楽 ~固有の舞 神職が伝承~

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 戸隠神社の特徴的な祭祀(さいし)の一つに、「太々神楽(だいだいかぐら)」がある。神職と女児が舞い、神にささげる、ここにしかない神楽だ。

 年3回の大祭や月1回の月並祭で奉納されるほか、初穂料を収めた講社による献奏が、中社と宝光社合わせて年間50回ほど行われている。ことし2月、県無形民俗文化財に指定された。

 戸隠5社のうち、神仏習合時代も純粋な神社だった火之御子社の社人・徳武氏が伝えてきた神楽舞を、今の神社になった明治時代に再編成したものという。いずれも昭和10年代に戸隠を訪れた川端康成は小説「牧歌」に、詩人・津村信夫は散文集「戸隠の絵本」に、自らが見た太々神楽を描写している。作品に描かれた神楽は、80年後の現在行われているものと全く変わらない。

 太々神楽は、太鼓と、雅楽で使われる篳篥(ひちりき)、竜笛が奏でる楽に乗せて、10の舞を行う。それぞれの舞は、はらい清めたり、神の徳をたたえたりする意味を持つ。冒頭の「降神(こうじん)の舞」は、翁の面を着けた1人の舞い手が、手に幣(ぬさ)と榊(さかき)葉を持って厳かに神を招く。「水継(みずつぎ)の舞」は男女2神が五穀豊穣を祈る。「巫子の舞」は、女子小学生4人が鈴と扇を手に舞う。

 クライマックスは「岩戸開きの舞」だ。岩屋に隠れてしまった天照大神に出てきてもらおうと、天鈿女命(あめのうずめのみこと=火之御子社の主祭神)が踊る。太鼓のリズムと踊りの動きが徐々に激しさを増し、頂点に達するころ、いかめしい面を着けた天手力雄命(あめのたぢからおのみこと=奥社の祭神)が現れ、迫力ある所作で岩戸を押し開く。

 舞い、楽を奏でる「楽人(がくにん)」は、旧院坊の主人である聚長と聚長家の子弟で総勢約50人。女神も登場するが、舞うのは面を着けた男性だ。舞はベテラン楽人が若手に教え、伝承している。楽も口伝で引き継がれている。

 愛らしい「巫子」は、かつては聚長家の女子に限っていたが、現代では中社・宝光社地区の小学3~6年生が担う。現在17人。自らも子どものころ舞った「巫子OG」が指導し、上級生が下級生の面倒を見ながら育てている。

 戸隠神社責任役員で御神楽対策委員の今井寿治さん(74)は、太々神楽を舞い続けて50年近くになる。「ただ習った形で舞えばいいというものではなく、気持ちや表現が大事。面を着けていても、面の下の表情が面に出る」

 中社楽長の安藤武宏さん(46)は「楽人によって得手不得手はあっても、皆神楽が好きで、熱心。しっかりしたものを後世に伝えていきたい」と話す。

 太々神楽は、4月26日(日)から5月26日(火)まで行われる式年大祭の期間中ほぼ毎日、中社で奉納される。
(2015年3月14日号掲載)

=写真=「岩戸開きの舞」で、岩屋の前で踊る天鈿女命(左)と、岩戸を動かそうと現れた天手力雄命(中央)