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060 グリンデルワルト周辺 フィルスト展望台 ~多彩なトレッキングの起点~

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 英語の「first」と同じスペルだ。お薦めの展望ナンバーワンとするガイドブックもある。だから「第一の」という意味に受け取る人もいる。ドイツ語では「尾根」という意味だ。

 ゴンドラに乗ってまず驚いたのは、途中のヘアピンカーブでUターンしたこと。乗っている時間は25分と、かなり長いものの、ベッターホルンやシュレックホルン、そしてアイガー北壁が見事な迫り方で、飽きることはない。

 終点の展望台駅には広々としたレストランもある。ここを起点とするトレッキングコースは多彩で、四季折々の風景を楽しめる一押しのコースである。

 人が多く向かう先は、バッハアルプゼー(湖)の往復2時間コース。アイガー、メンヒ、ユングフラウの三名山が湖面に映る様子は捨て難い。夏、天気のいい日には水着持参で泳ぐ人さえいる。

 初めてここをトレッキングした日のことだ。湖に着くや、雷雨になった。雷はすさまじく、人々は近くの避難小屋に。ここで持参のあめや菓子を交換したり歌ったりし、30分もいた。そして、うそのように晴れ間が見えた。互いに別れを告げて三々五々、各自のコースに散っていった。

 私はボルトへ直に下山するルートを取った。細道の快適なコースだが、難所も幾つかあった。農家の横を通る際には、放牧牛用の鉄線があり、狭い通路で誤って腕が触れると、静電気でビリビリ。汗をかいていると、電気もよく通る。

 2時間余も歩いて、やっと途中のゴンドラのボルト駅に到着。古びたヒュッテがあり、昼食に注文したスパゲッティのふやけていること。それでも1200円だった。気に入ったのはエーデルワイスの刺しゅうがある紺色のポロシャツ。帰国後、夏はよく着ている。

 それが昨年の旅で再訪すると、大きく様変わりしていた。古ぼけたボルトのレストランはなく、例のポロシャツもない。すっかり近代的なレストランになったスタッフも、しゃれた制服を着て都会風。そんな変容に、スイス観光の好調さを痛感する。

 周囲は子ども連れのバカンス客であふれていた。レンタルバイクでさっそうと下る若者たちでにぎわっていた。上空では体験ツアーのパラグライダーが飛び交い、自分が時代遅れになったことを、冷たいビールを飲みながら寂しく感じていた。
(2015年3月21日号掲載)

=写真=トレッキングの景勝地・バッハアルプゼー
 
ヨーロッパ美の旅