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82 順子夫人が撮影 ~最も実像に近い写真~

82-zozan-0314.jpg 昨秋、松代町の日本画家、高橋雲峰さんの自宅で娘さんのとよさん(81)が、遺品の中から見つけ出した象山の珍しい写真=写真=を拝見した。裏には、次のような記述がある。

 「佐久間象山先生御影(みかげ)順子夫人の撮影されし写真を原寸大に複写す。長野市松代町代官丁 高橋雲峰。昭和六十一年十月」

 雲峰が生前、はがき大のガラス湿板の原本から、写真屋に依頼して焼き増ししたものだが、原本は誰かに貸し出して返却されておらず、現在、行方不明だ。

 象山ほどの人物になると、写真や似顔絵は百面相を見るようで、数限りなく出回っている。が、雲峰所蔵の写真が最も実像に近いらしい。

 象山は写真機のことを留影鏡と呼び、誰かは分からないが、ほかの2人と共同出資で、45両という大金を出して舶来品を購入した。

 側室のお蝶にこれを使って撮影させたものが伝わっているが、技術が未熟で、ボンヤリとした画像だ。しかも、恐ろしい眼つきとなり、額が長く、顔が上下に伸び過ぎているように見える。

 その後、写真師の手になる別の写真も複写を重ね、そのたびに修正を勝手に加えるなどしたのだろう。実物と全く相違を来す結果になったようだ。

 象山は平常、温顔だったが、眼は底光りし、にらみつけられたら、たいていの人は見返すことができなかったという(宮本仲著「佐久間象山全集」)。

 象山は今でいう「年の差婚」で、当時17歳の順子夫人と結婚したのは、嘉永5(1852)年12月15日。象山42歳。象山は夫人を「お前さま」と呼び、夫人は「先生」と呼んだらしいが、この写真を見ると、「先生、撮りますわよ」などと、やりとりしているのだろうか、ほほ笑ましい様子が想像できる。

 
象山余聞