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84 来歴便箋に ~寄贈された掛け軸~

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 昨年の夏、佐久間象山作の七言絶句の掛け軸=写真=が、信濃教育会に寄贈された。中野市在住の元教員、丸山精一さん(89)宅で家宝として保存されていたものだ。

 丸山さんは1985年に鬼無里小学校校長を務め上げるまで30年以上、教育に携わってきた。

 掛け軸は絹本で、軸先は今では手に入らない淡い黄白色の象牙。箱は二重にこしらえてあり、土蔵で大切に保管されていたという。

 七言絶句の題は「偶成」で、次のように書かれている。
 造化密移春復秋
 此心常与古人遊
 前身應是華陽老
 萬巻詩書不下樓

(書き下し文)
 造化(ぞうか)密(ひそ)かに移り春復(ま)た秋
 心常に古人と遊ぶ 
 前身は応(まさ)に是(これ)華陽(かよう)の老なるべし 
 万巻の詩書あり楼(ろう)を下らず
 どのような内容かというと、 
 大自然の動きが静かに春から秋へと移る。
 (私は閉居中で独りぼっちだが)昔の優れた人たちと一緒で、悠々自適、心は何ものにも束縛されていない。

 私の前身は華陽の老(浮世離れした仙人)だったかもしれない。

 身の周りには多くの書物がそろっており、世間の人と交わるまでもあるまい。

 象山は49歳、1859(安政6)年ごろの作品と見られる。掛け軸の故事来歴を、丸山さんの祖母、りきさん(1868年生まれ)が、1946(昭和21)年9月8日の日付で、2枚の便箋に次のように書き残している。

 「私(りき)の祖父が病気で松代にお住まいの佐久間象山先生のところに出掛けて診察して頂き、一緒に出掛けた15、6歳の頃の父親が象山先生に書いてもらった」
 丸山さんは「子どもたちの教育に役立ててもらえればうれしい」と話している。
(2015年5月16日号掲載)

 
象山余聞