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062 グリンデルワルト周辺 ミューレン ~華やぐ姿に伝統が見える~

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 ツェルマットと同様にガソリン車規制のあるミューレンは、中心から離れたリゾート地。ここは、訪れるたびに何かの発見がある。昨夏の滞在では、建設ラッシュだった。

 もともとアパートなどなかった静かな村に、旅行者向けのアパートができてきた。自然保護が徹底され、スイスの原風景を保っているミューレンは、住人たちの人柄も素朴だ。

 4年前、売店でちょっとした買い物をした時、そこのおばあさんはこちらが日本人だと知るや「これ日本の大学教授のものなの。私たちには分からないから使って」と未開封のDVDをくれたり、絵はがきを5枚ほどおまけでくれたり。「ミューレンの人と日本人とは似ている」と言った。

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 昨夏の滞在は、偶然お祭りの最終日だった。着飾った地元の人々。牛やヤギも飾りを付けてまんざらでもなさそうだ。老若男女が民族衣装で着飾っている。37度もあるというリキュールを振る舞ってくれ、チーズフォンデュをサービスしてくれた。私は下戸だが、青やピンクの衣装を身に着けた人を見ているだけで幸せな気分になり、飲めない酒も進む。

 7年前に定年退職した時、私は妻とオーストリアに1、2年滞在する計画を立てていた。それはチロルの民族衣装やヨーデルにあこがれていたせいもある。残念ながら、自治会長の役が回ってきて頓挫してしまった。

 だから、レダーホーゼン(男性の革ズボン)や女性のかわいい色の前掛け姿を見ると、うきうきしてくる。アルコールで顔を赤くした私に、仲間が「本当にうれしそうだね」と何度も声を掛けてきた。

 消防団がユーモラスなラッパを鳴らし、ドラム隊が勇ましく先頭を切って進み、カラフルな服で得意そうに笑顔の子どもたちが付いて行く。エーデルワイスの鉢を持った女の子もいる。ハンター姿の男たちは威厳ありそうに練り歩く。牛の張りぼてをかぶった年長の男の子。みな華やいで見える。

 しんがりは力仕事で鍛えた腕力自慢の人たちだ=写真下。大きなカウベルを両手で抱えて左右に打ち鳴らし、足を合わせて村中を歩く。かつては若い男が、若い女性に力持ちをアピールしたのだろう。小雨が降る中を傘も差さず、口をへの字に曲げながら、マッチョな男ぶりを見せる。そんな光景に、伝統が垣間見えて面白い。

 ともかく、ミューレンはこれまで楽しい思い出ばかり。調子に乗って37度のアルコールを何杯も頂戴し、千鳥足で村を後にした。
 (2015年5月30日号)

=写真1=民族衣装で着飾ったミューレンの人たち
 
ヨーロッパ美の旅