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063 スイス ミニチュア公園 ~ガリバー旅行記の気分に~

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 イタリアと国境を接する町・ルガーノ。スイス南東にあるティチーノ州の町だ。名前からしてイタリア語の響きで、別名は「チェレージオの女王」である。古代ローマ人が進出する以前の先住民族だったケルト人が使った「枝分かれの多い」という形容詞が、チェレージオだ。複雑に入り組んだルガーノ湖の地形を表す。

 駅を降りた瞬間から、スイスではないところに来たかのようだ。それまでの山歩きで出会ったスイスの人たちとは顔つきが違う。言葉はむろんイタリア語。気候も、8月とあって暑い。アルプスの寒風を遮り、南の風をとどめる年中温暖なリゾート地だ。

 山歩きの気分を百八十度変えて、スイス・ミニチュア公園に向かった。正式には「ミニアチュール」といい、近郊のメリーデという場所にある。ルガーノ湖から遊覧船に乗って20分。(埠)(ふ)(頭)(とう)から公園まで150メートル歩く。

 スイス国内の名所旧跡が25分の1の縮尺で、120の模型が並ぶ。夏休みとあって家族連れも多かった。かれこれ半世紀以上前の1959年開業という。

 
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私たちが訪ねたグリンデルワルトのグルント駅からメンリッヒェン展望台のロープウエーもミニサイズで動く。雪を模した山並みに向けてしっかりとゴンドラも上り下りしている。ユングフラウ鉄道・BDhe型の模型だ。全て機械仕掛けの中央制御。車も絶えず動いているので、子どもだけでなく大人も飽きない。

 チューリッヒ湖を遊覧する蒸気船も航行。水中にはたくさんのコイが泳ぐ。悲しい歴史とバイロンの詩で有名なシヨン城もある。

 公園内は周囲だけでなく、中の通路を自由に歩くことができる。教会や駅舎なども精巧だ。記念写真を撮る観光客は、さながらガリバー旅行記の小人の国に来たような気分にさせられる。園内ではミニチュア電車も動き、3スイスフランを出せば乗れる。大人も子どももはしゃいで童心に帰っている。

 「日本人が好きな、受け身的なテーマパークではなく学習もできる能動的な公園だ」と職員は胸を張る。長野にもこんな施設があればいいな―という私のつぶやきに、同行した一人に「長野では、金を使わないで誘客を図ろうとするから無理」と一刀両断にされてしまった。
(2015年6月13日号掲載)

=写真=25分の1の模型が並ぶミニチュア公園

 
ヨーロッパ美の旅