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064 スイス ガンドリア村 ~湖にせり出す建物に注目

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 遊覧船券売所の日本好きの女性が勧めてくれた村・ガンドリアを訪ねてみた。ルガーノ湖畔から遊覧船で35分。車の乗り入れ禁止の漁村。坂道だらけの迷路のような村なので、車は入れるはずもない。北にそびえる山が風を防ぎ、日当たりが良い。

 人口わずか250人。湖にせり出して、山の斜面にへばりつくように建物やテラスが半高床式に並ぶ不思議な光景が魅力的だ。この張り出したテラスでランチを取ることにした。
 湖には親子で泳ぐ姿が見えた。4歳くらいの幼子がアームフロートを付けて泳いでいる。傍らにはセパレートの水着の若い母親が子どもに声を掛けながら、岸辺沿いで楽しそうに平泳ぎをしている。のどかな親子のバカンスタイムに、平和のありがたさをかみしめながら眺めていると、料理が運ばれてきた。

 私が頼んだのは、白身魚のムニエル「フィレ・ド・ペルシェ」。この湖でとれた魚を使った名物料理で、事前学習で気になっていた品。こんがり焼けて、皿に6枚が放射状に並べられている。一口食べて分かった。これまで外国で食べた魚料理の中で、間違いなく最も美味だった。

 この村が、ルガーノと近年合併したのには訳があるという。泳げる湖としてスイス国内で屈指の水質を誇る湖ではあるものの、将来、バクテリアや微生物が増えれば、現在使用している飲料用水に支障が起きる恐れがある。水面下に、約3キロのパイプラインをルガーノ市内までつなげ、汚水処理を施さなくてはならなかった。

 その財政負担がこの小さい村では無理なことから、合併に踏み切った経緯がある。
 16~17世紀の家屋が立ち並ぶこの村は、もともとは先史時代からケルト人の居留区が今よりも高い位置にあった。しかし、近年、画家たちが競って作品にしたことで脚光を浴びた。さらに、湖の漁獲高は年間28トンにも及び、ウナギ、コイ、マスなどの味が画家や旅行者に注目されてきた。

 坂道を登っていくと、オリーブや糸杉、月桂樹やザクロなど、地中海の植物も植えられている。かつては鉄道からも取り残されて孤立したような村が、今では観光客の穴場スポットになっている。日本とりわけ信州の観光にも大いに参考になると思えた。
(2015年6月27日掲載)

写真:湖の縁から斜面に並ぶ建物

 
ヨーロッパ美の旅