血液の中には、糖分(ブドウ糖)が含まれています。この血液中の糖分(血糖)の濃度を調節し、体がエネルギーとして利用するのを助けているのが、インスリンというホルモンです。
しかし、インスリンは、肥満や過食、運動不足などによって働きにくくなり、血糖が増加します。これが糖尿病の主な原因です。
高血糖で動脈硬化
血糖値が高い状態が続くと、少しずつ血管が傷ついて、次第に老化し、もろくなる「動脈硬化」が進行します。動脈硬化はさまざまな病気を引き起こします。合併症です。
糖尿病の合併症として多いのは、神経、目、腎臓の障害です。心筋梗塞などの虚血性心疾患や脳卒中も多く合併します。
糖尿病自体は、自覚症状がほとんどありません。そのため、検査で「高血糖」と指摘されても、「少し食事を節制すれば良くなる」と軽く考え、医療機関を受診しない人が多いようです。しかし、気が付いた時には合併症が進行した糖尿病になってしまっている人が少なくありません。
予備軍でも合併症に
血糖値は通常、食後に少し上がりますが、2時間もすれば元の値に戻ります。糖尿病の検査では、75グラムのブドウ糖液を飲み、その後の血糖値の変動を調べて、血糖レベルを「正常型」「境界型」「糖尿病型」の3つに分けて判定します。
境界型の人は、数年以内に糖尿病を発病する確率が高く、「糖尿病予備軍」と呼んでいます。血糖値レベルは境界型でも動脈硬化は進行していて、心筋梗塞や脳卒中などの合併症がすでに起こりうる状態です。
また、空腹時の血糖値が高い人よりも、食後の血糖値が高い人の方が、心筋梗塞や脳卒中の危険性が高いことが分かっています。空腹状態で受ける健康診断では血糖値が正常でも、食後高血糖になっている可能性があるので注意が必要です。
早めに医療機関へ
糖尿病の予防と治療には、食生活の改善と運動の習慣がとても重要です。糖尿病治療には、内服薬やインスリンを注射する方法が併用されることもありますが、基本はあくまでも食事と運動です。

自分に合った新しい生活習慣を身に付けるには、正しい知識と支援者が必要です。糖尿病と言われたら、必ず医療機関を受診してください。糖尿病予備軍の人も、ぜひ早めに受診してください。
(2015年6月13日号掲載)
=写真=清水 敬子(看護部 第1外来看護主任=糖尿病看護認定看護師)