078 高気圧酸素治療装置 ~細胞機能アップなど3つの効果に期待が

 高気圧酸素治療装置は、カプセル型の医療機器です。装置には1人用と多人数用があり、長野市民病院では1人用の装置を使用しています。

 気圧と酸素を利用
 高気圧酸素治療装置はその名の通り、「気圧」と「酸素」の性質を利用して治療を行います。
 私たちが生活している地表の気圧が1気圧であるのに対し、治療に使うカプセル内は2気圧になります。通常、血液と結び付くことができる酸素の量には限界がありますが、気圧を高くすると、血液中に溶け込む酸素量を増やすことができます。

 また、通常、私たちを取り巻いている空気の成分は窒素が約80%で、酸素は約20%に過ぎません。しかし、高気圧酸素治療装置の中では酸素を100%にすることができ、体内に吸入される酸素濃度を増加させることができます。

 これら2つの要素によって、高気圧酸素治療では主に3つの効果が期待されます。

 (1)血液中の酸素量を増やし、細胞機能を高める
 血流が遮られ、低酸素状態になっている末端細胞にまで酸素を送り込むことができるようになり、衰弱した細胞の機能を高めることが期待されます。通常、体内の酸素は血液中の赤血球と結合して体中に運搬されますが、高気圧酸素治療中は酸素分子が直接血液中に溶け込むことができるようになり、体内の酸素濃度は飛躍的に上昇します。

 (2)体内にできた気体(空気・ガス)を圧縮し、局所血流を改善する
 高気圧下では、気体の容積を小さくすることができます。この特性を利用し、腸管などにたまったガスを減少させることで、その周囲の血流を改善する効果が期待されます。

 (3)酸素の抗菌作用により有害細菌の発育を阻害する
 細菌には、酸素の存在する環境下では発育が困難な「嫌気性菌」という種類のものがあります。酸素濃度を上げることができる高気圧酸素治療は、こうした菌による感染症の治療にも有効とされています。

 外と会話も可能
 治療時には、気圧の変動によって耳が痛くなることがありますが、耳抜きを行うことで痛みは緩和されます。治療時間は60分間ですが、装置の中にいても外にいる人と会話することは可能で、治療中にテレビを見ることもできます。

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 装置の内部は狭いですが、治療中は同じ姿勢でいる必要はありません。安全に治療を行うために衣類の着用などに制限はありますが、職員が毎回点検を行い、安全に実施できるように取り組んでいます。
(2015年6月27日掲載)

丸山卓也 臨床工学科主任、臨床工学技士

 
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