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066 スイス カペル橋 ~歴史の重みと市民の郷土愛~

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 ヨーロッパ最古、屋根付きの木造橋が美しい姿を見せる。スイス中部のルツェルンにあるカぺル橋だ=写真。橋の名前の由来は、北側にある聖ペテルス・カペル(礼拝堂)。英語ではチャペルに相当する。

 14世紀半ばに建てられ、ルツェルン湖から、市内を流れるロイス川に架かっている。長さは約204メートルだ。400メートル下流には、全長80メートルのシュプロイヤー橋もある。

 古さもさることながら、橋の外側が花で飾られている光景から、市民がこの橋をこよなく愛していることが伝わってくる。スイス国鉄の駅から歩いても5分とかからないことも手伝い、列車乗り継ぎの待ち時間を利用して散策できるのもうれしい。

 カペル橋はもともと、城壁の一部として造られた。その証拠に、湖に面した橋の欄干は陸地側に比べて高くなっていて、湖上からの外敵から守りやすく設計されている。

 屋根付き木造であることや、窓辺が花で覆われていることなど、派手な外観ではある。だが、一歩中に入ると、天井部の梁(はり)に、地元の守護聖人にまつわる伝説や国の歴史に関する板絵110点が描かれている。17世紀の画家ハインリッヒ・ベークマンが手掛けたこれを見るだけでも、この橋を渡る価値がある。歴史絵巻となってその重さを感じさせてくれる。

 木造が災いして、1993年に、火災で3分の2が焼失したものの、そこは郷土愛にあふれるスイス人。翌年4月、見事に再建された。

 橋の途中には、八角形の塔・ワッサートゥルム(水の塔)がある。橋よりも一足早く、1300年ころに築造された。とんがり屋根が目に付く。見張り台として造られたが、ご多分に漏れず、やがて監獄や拷問部屋として使われた。

 周辺にはホテルやレストランが並び、小物を売る出店などがひしめき、観光地の体を成す。駅に近いとあって、エスカレーターで地下に降りると、近代的な店が並び、パン屋やブティックなど生活用品の店が連なる。

 地上には歴史的建造物、地下に潜れば近代的な商店―。こんな中世と現代との融合に、ゆっくり再訪したいと思わせる美しい街だ。
(スイスの項 おわり)

(2015年8月29日号掲載)
 
ヨーロッパ美の旅