
梅雨明け後の7月末の土曜日、カルチャースクールの講座「里山を歩こう」の会員20人と霊仙寺山(1875メートル)に登った。
長野市内から飯縄山(1917メートル)を望むと、三つあるピークのうち一番東北側が霊仙寺山だ。「市民の山」として親しまれている飯縄山に比べ、登る人は少ない。その分、静かで自然が保たれており、斜度もきつく、登りがいのある山だ。
7時に小型バスで長野駅前を出発。信濃町の霊仙寺(りょうぜんじ)集落の先にある登山口から正面登山道に入る。
一面コケに覆われた道を進むと、間もなく礎石が残る前宮跡や講堂跡に出合う。その先には奥の院跡、御神木の桜が。これらは五社権現の遺跡で、鎌倉・室町時代には修験の場として隆盛を極めたという。
ここを過ぎると、徐々に傾斜が増す。林層も杉からブナやシラカバに変わる。何度も休憩を取りながら、ほぼ中間点のスキー場登山道との分岐に達する。風のない樹林の中とあって、汗が額から滴り落ちる。

分岐から上は、さらに斜度がきつくなる。前日の雨で道が滑りやすく、大きな段差があると難儀する。両側はネマガリダケのやぶになり、その先の登山道はササに覆われて足元が見えない。
ようやく樹林帯を抜けると、色とりどりの花が迎えてくれる。シシウド、シモツケソウ、マルバダケブキ、ギボウシ、ヒヨドリソウ、ヤマアジサイ...。早くもマツムシソウが咲き、空にはトンボが乱舞している。アザミの花に止まったキアゲハを撮影できた=写真下。
飯縄山への分岐を過ぎると、山頂はすぐそこ。コースタイム3時間のところを、全員が登りきるため4時間近くかけて到達した。山頂からは眼下に野尻湖や霊仙寺湖、牟礼の盆地、飯綱高原のゴルフ場などを望む。その先に長野の市街地が広がる。ふだん見上げている場所から、見下ろしてみるのも一興だ。
山頂で昼食を取った後、下りに入る。足元の見えないササやぶで、滑るため慎重に足を運ぶ。帰路は、スキー場登山道を下るため、分岐からゲレンデに入ると、今度は草が背丈ほども伸びていて道が分からない。10分ほどやぶこぎをしていると、道らしき場所に出た。

最上部リフトの中間降り場で後続メンバーの到着を待ち、ゲレンデの管理道路を下る。スキーならアッという間だろうが、この道が実に長く、膝が笑う。
何とか全員が無事にバスの待つスキー場センターハウスにたどり着き、むれ温泉・天狗の館で入浴。露天風呂から、いま登ってきた霊仙寺山を仰ぎ見、あらためて人間の足の偉大さに感心した。
(2015年8月8日号掲載)
=写真=山頂からの眺望(中央左に建設中の浅川ダム、その先に長野市街地)