
8月最初の日・月曜日、山仲間4人で蝶ケ岳(2677メートル)~常念岳(2857メートル)を縦走した。この稜(りょう)線は「北アルプスの展望台」といわれるだけあって、槍・穂高連峰の大パノラマを楽しめた。
初日は友人の車で6時半に長野市を出発。長野自動車道を安曇野インターで下車。国営アルプスあづみの公園の脇を通って、烏川沿いに林道を進む。
終点のゲート手前が駐車場だ。満車状態の中で、1台分空いている場所を見つけ、8時半に歩き始める。三股で登山道に入ると、すぐ前常念岳への道と分かれ、つり橋を渡る。ここから5時間の上りだ。
樹林帯の中の道はよく整備されていて歩きやすい。間もなく「ゴジラの木」と名づけられた枯れ木が現れる。確かにゴジラの頭に似ている。

「力水」と呼ばれる水場でのどを潤した後、ほぼ中間点の「まめうち平」で休み、急な道をジグザグに登る。標高2000メートルを過ぎても、まだ樹林の中だ。
ようやく森林限界を超え、大滝山との分岐に出ると、一面のお花畑だ。この辺が春になっても雪が残り、山名の由来の蝶の雪形が現れる場所のようだ。
稜線に出ると、穂高の峰々が目に飛び込んでくる。その右手には、槍ケ岳への山々が続く。大展望を楽しんだ後、宿泊先の蝶ケ岳ヒュッテに入る。
部屋に荷物を置き、生ビールで乾杯。その後はベランダに出て、持参したウイスキーやコーヒーを飲みながら、ゆったりと眺望を楽しむ。下界の暑さも忘れ、至福の時間だ。早々と夕食を済ませ、19時前に床に就く。
翌朝は5時前に起床。外では、大勢の登山者が日の出を待っている。きょうもすばらしい天気だ。東側の雲海から太陽が顔をのぞかせると、目の前の槍・穂高連峰が、日の当たる部分から赤く染まる。
やがて全山が朝日を浴びるころ、出発。左手に槍・穂高を望みながら、快適な稜線歩きが続く。横尾への分岐を過ぎ、ひと登りした小高いピークが蝶槍だ。

ここから急な下りで樹林帯に入る。再び上り始めると、今度はお花畑が広がる。トリカブトの青がひときわ鮮やかだ。アップダウンを繰り返し、最低鞍部(あんぶ)まで来ると、目の前に常念岳がそびえている。
標高差400メートルの上りを、あえぎながら登りきると祠(ほこら)のある山頂だ。昼食の弁当を食べながら、北アルプスの山々が連なる景色を楽しむ。
帰路は前常念岳から三股へ下る。常念から前常念にかけての道は岩だらけだ。ペンキの赤丸を頼りに、足を置ける岩の頭を選んで歩く。
前常念岳直下の避難小屋を過ぎると、長い樹林帯に入る。棒のようになった足を引きずりながら、やっと下山口に到着。歩数計は、この日1日だけで3万3千歩を記録していた。
(2015年8月22日号掲載)
=写真1=朝日を浴びる穂高連峰(蝶ケ岳ヒュッテから撮影)
=写真2=南側から見ると台形に見える常念岳(蝶ケ岳への登山道から撮影)