
9月末の土曜日、カルチャースクール里山講座の会員と生坂村の京ケ倉(990メートル)に登った。一風変わった山名で標高も千メートル足らずだが、眺めが良く岩場もあって、近年人気の里山だ。
前日までの雨もやみ、7時に長野駅前を中型バスで出発。国道19号を松本方面へ向かう。生坂トンネルの手前で旧国道へ入り、生坂小学校脇の村道を進む。途中から林道となり、高さ2メートルほどの動物侵入防止用フェンスを開け閉めして中へ入る。バスの車幅ぎりぎりの狭い道を5分ほど進んだところが登山口だ。
入り口に「キノコ、山菜は取らないで!」「熊出没注意」の看板。8時半に登り始め、赤松林の中を行くと、「キノコ監視員」のおじさんが「林の中は駄目だが、道端のキノコなら採ってもいいよ」と言う。「たとえマツタケでも」の言葉にうれしさが増す。
下ってきた地元の男性のリュックと腰のびくにはマツタケがいっぱい。それからは周囲に目を凝らしながら登る。さすがにマツタケはなかなか見つからないが、至る所にある毒キノコに交じって、食べられるアミタケなら採り放題といった感じだ。

途中の見晴台から犀川を見下ろす。霧がだんだん晴れてきて、川面が見え隠れする。そのうち、沿岸の稲田や生坂ダムがはっきり見えるようになってきた。
間もなく尾根上に達し、北へ進むと狭い岩稜(がんりょう)に。「馬の背」と呼ぶ、戸隠山の蟻(あり)の塔渡(とわた)りのような露岩の上を慎重に歩く。ここからは、半円を描いて大きく蛇行している犀川が見渡せる=写真下。
巨岩の「トドの背岩」をう回し、ロープを頼りに高さのある岩場をよじ登ると、ほどなく頂上だ。参加者全員が無事に登頂し安堵する。小広い山頂で一休みした後、北側にそびえる大城(980メートル)へ。

急斜面を一気に下ると、急登が始まる。ほぼ登り切ったところで足元を見ると、何やら似たようなキノコが。ありました!
ついにマツタケをゲット。ここまでに時折歓声が上がり、私以外にも何人かが手にしたようだ。
大城は戦国時代に山城があった場所。付近には井戸や郭(くるわ)の跡も。ここで昼食。東側は緑一色の谷で、向かいに筑北村の岩殿山の山系が続く。
11時半に下山を開始。途中の物見岩から燕岳など北アルプスを望む。その先のはぎの尾峠は1965(昭和40)年まで、分校の子どもたちが村中心部の本校へ通った山道という。
あずまやのあるグレースの森で休憩した後、眠峠(ねむりとうげ)への分岐を下れば登山口へ出たのだが、さらに先の眠峠まで歩いてしまった。そこは林道の終点。結局、アスファルトの道を2キロほど遠回りする羽目に。下山後はバスで大町市八坂の金熊温泉明日香荘に立ち寄り、汗を流して長野へ帰った。
(2015年10月10日号掲載)
=写真=「馬の背」を慎重に進む参加者